また、20年4月に緊急事態宣言を出した際に、当時の安倍首相は「一か月で宣言から脱出が可能となる」といった発言もあり、現場ではかなり急ピッチに対応が進められていました。
委託事業者は20年5月に随意契約によって決まりまっています。厚労省が新しく提案依頼書(RFP)をつくり、入札の公示をして、事業者の選定をして…などと通常の入札をするのは現実的には難しい状況でした。
もう少し時間をかけて、開発や運営のノウハウのある事業者を選ぶのがより適切だったかどうか、検証する必要があると思います。
――日本はなぜIT技術をうまく活用できないのか。日本ならではの課題はありますか。
スマホアプリの開発・運用のノウハウは、基本的には民間の事業者にあり、政府にはほぼないです。そうすると、官民の人材交流、民間でノウハウを持っている人を厚労省側に採用するということが必要だったと思います。
アメリカでは、大統領選で各陣営のCTO(最高技術責任者)にITベンチャーなどの実務担当者が就いて、キャンペーンを展開するということが行われています。アメリカと比べると、民間の進んだノウハウを活用するような人材交流が日本では進んでいないと思います。
21年9月に発足したデジタル庁はこうしたことを実践しているところですし、内閣官房ではCIO(情報化統括責任者)補佐官として民間から人材を採用していましたが、政府全体としてはまだこれからです。
――ココアをどう総括するべきでしょうか。
今回のアプリの開発、運営はもっとうまくできたはずです。
ココアの機能が本当に必要だと考えるのであれば、次のパンデミックが起きた際にはどうするか、しっかりと今回の課題を議論しておくべきです。
特に陽性者の登録をどうするか。法律をつくって登録を義務付けるのがいいのか、働きかけをうまくすることだけで登録してもらえるのか、インセンティブを設けたらいいのか、立法の場で議論が必要だと思います。