3千万人、4千万人が使うアプリとなると、かなり大規模なものとなります。それを運用するノウハウを持っている事業者は、日本では限られています。
アップルとグーグルのAPI(アプリとスマホなどのOSをつなぐ仕組み)が頻繁に変わってしまう難しさもありました。
さらに、ブルートゥースという無線電波を使って陽性者と接触した可能性がある人を見つけ出すという仕組みは、アプリ開発の難易度をさらに上げます。
下請け、孫請けの問題以前に、きちんとしたノウハウがなければできない事業だった。発注側、受注側にそういった考えがあったか、疑問に思います。
――委託先の事業者の問題はどう見ていますか。
基本的にアプリの開発は、作ったらそれで終わりということはありません。時間をかけて不具合を改善していくのが基本的な前提としてあります。
アンドロイド版のアプリで通知が4カ月ものあいだ送られていなかった問題に関しては、公開されているコードソースを見た人から11月の時点で問題が指摘されていました。それにもかかわらず運営側がそれに対応しない、結果として問題が4カ月も放置されたというのは、あり得ないことです。
この問題については厚労省で検証が行われており、多重下請けのなかで役割分担や担当業務に不明瞭な部分が生じていたと指摘されています。
委託先の能力の問題もありますが、政府ないし厚労省にも、今回の事業を管理運用する能力が十分になかったといわざるを得ません。自動車会社も建設会社も下請けが多数ありますが、しっかりとした品質のものが出てきます。これは発注者側の品質管理ができているからです。
事業の全体観を持ってリーダーシップを発揮できる人材が、委託先にも、厚労省側にもいなかったのも大きいです。
――政府や厚労省の課題はその他にどう見ていますか。
当初、この議論は内閣官房の「新型コロナウイルス感染症対策テックチーム」が進めていました。しかし、アップルとグーグルが「公衆衛生当局」が管理することを求めたため、急きょ厚労省が主導することになりました。