就任会見で、投手陣の強化を急務に挙げた森監督は、まとめ役の捕手・谷繁元信を「もう一度叩き直す」と宣言。“マシンガン打線”についても、「ピストルで大砲に向かっていくなかで、大砲を持っているかのような錯覚がある」と犠打の重要性を説き、巨大戦力の巨人に挑戦者として立ち向かう意気込みを示した。

 だが、1年目は4位・広島に1勝差で何とかAクラスを死守したものの、オフに谷繁が森監督との確執から中日FA移籍し、求心力も低下。翌02年は5月に13連敗を記録するなど、最下位から浮上できず、球団内で続投に反対する声が高まったことから、シーズン中の9月に解任された。

 自由奔放が売りだった権藤博前監督と180度異なる緻密な野球を推し進めたことが、両監督の野球をミックスした采配を期待していた選手に受け入れられなかったといわれる。

 就任1年目のドラ1・内川聖一が退団後に主力になったことが、数少ない収穫のひとつだが、後任監督4人もチームの再建に苦しみ、横浜は02年からの10年で最下位8度の低迷期に突入する。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2021」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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