加齢に伴う心身の変化によって、住み慣れたわが家にはリスクや不便さが増えてくるといいます。好評発売中の週刊朝日ムック『早めの住み替えを考える高齢者ホーム2023』では、最後まで安全で快適な生活を送るために勧められる早めの住み替えについて解説しています。
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■高齢者の転倒の6割は自宅で起きている
子どもが独立し、自分とパートナーの二人だけになったわが家。あるいはパートナーに先立たれて、一人暮らしになったわが家。人生100年時代になって、この先、20年、30年と高齢者だけの生活が続きます。
内閣府の令和4年版「高齢社会白書」によると、65歳以上の高齢者のいる世帯は全世帯の約50%を占め、そのうちの6割以上が高齢者単独あるいは高齢者夫婦のみの世帯となっています。1980年に三世代同居世帯が約半数を占めていたのとは、まったく異なる状況になっているといえるでしょう。
高齢者世帯でも、住み慣れた自宅にいれば安心、と思いがちですが、実は自宅は、高齢者にとって思わぬ危険が隠れている場所でもあります。
東京消防庁の調べでは、「65歳以上の高齢者の事故の約8割は転倒。転倒場所は6割近くが自宅」となっています。さらに、転倒場所はリビング・寝室が圧倒的に多く、玄関・勝手口、廊下・通路、トイレ・洗面所の順で続いています。
リビング・寝室は過ごす時間が長いことも要因の一つと考えられますが、そんな場所で転ぶなど、元気なうちには想像がつきにくいかもしれません。さらに高齢になると大ケガになりやすく、回復にも時間がかかります。転倒などの事故で、命に別状はないが入院が必要な「中等症」のケガになる割合は、65歳が約3割、85歳では5割近くになるといいます。
また、「転んで骨折したとしても数カ月の辛抱」という考えは甘いと言わざるを得ません。高齢者が転倒して大腿骨を骨折すれば手術となり、入院によって筋肉の衰え・筋力の低下が進み、再度転倒するリスクが高まります。寝たきり、認知症のような深刻な経過をたどることも少なくありません。