当麻寺金堂の塑像弥勒如来坐像(中央)=2022年2月28日、奈良県葛城市
当麻寺金堂の塑像弥勒如来坐像(中央)=2022年2月28日、奈良県葛城市

 お寺や博物館で出会ったことのある仏像。如来、菩薩、明王、天部……それぞれの姿かたちが伝える仏像のメッセージを学べば、仏像の味わい方もきっと変わってくるはず。週刊朝日ムック『歴史道 Vol. 23 仏像と古寺を愉しむ』では、正しい仏像の見方を特集。ここでは「如来」をひもとく。

【イラスト】仏像「如来」を解説!

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 人に歴史があるように、仏像にも歴史がある。1体の仏像から、多くの情報が読み取れれば、これまで仏像と向き合った時とは違う感動が得られる。これを読んで、お寺や博物館に行けば、きっとこれまでの何倍もの楽しみ方が身に付くはず。そんな仏像鑑賞法をご紹介する。

 仏像は、仏教が誕生してすぐに作られたわけではない。今から約2500年前のインドで、ゴータマ・シダールタという一国の王子が出家し、6年間修行して悟りを得た。その時の悟りを人々に説いて、共感した者が集まり、仏教が成立する。悟った人をブッダといい、目覚めた人という意味だ。一般には釈迦といわれる。仏教が広がり、仏教の信仰が盛んになった。しかし、釈迦も生身の人間なので当然亡くなる。これを涅槃といい、深い悟りという意味だ。その後、すぐに仏像が作られたわけではない。崇拝した人の姿をかたちにすることを畏怖したと考えられる。それから、約500年後にようやく仏像が誕生した。

 ところで仏像は何体あるのか。経典の中で仏像の数を数えると、おおよそ3000体といわれる。これには理由があり、仏教では三世という考え方がある。つまり、過去、現在、未来という時間の観念だ。この三世に各々1000体の仏像がいるとされる。しかし、それを全て覚える必要はない。

 仏像と向き合って、まず確認したいのが仏像の種類。数千体もある仏像だが、種類はたったの4つ。「如来」、「菩薩」、「明王」、「天」である 仏像を見て、装飾品を身に着けず、衣だけの素朴な姿をしていたら如来といえる。これは悟った姿なので欲がないためシンプルな表現というわけだ。次に冠をかぶったり、装飾品を身に着けていたら菩薩、これは現在修行している姿を表現し、一般的には釈迦が王子だった時の姿をイメージして作られている。

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