この馬の評価を難しくしているのは、勝ったG1がヨークシャーオークスを除けばどれも地味な裏街道的な位置づけのレースばかりなこと。昨年8月のベルリン大賞ではトルカータータッソを2着に下しているのは高評価すべきだが、それも1年以上前の話だ。前走のヨークシャーオークスでは今年の英オークス馬チューズデーを破ったが、そのチューズデーは9月の仏G1ヴェルメイユ賞で4着どまりだった。目下の充実度なら出走馬の中でも一番だろうが、相手関係だけを見るならばG1での5連勝という実績を鵜呑みにするのは危険かもしれない。
タイトルホルダーは6月の宝塚記念をコースレコードで制し、中距離でも通じるスピードを証明。その実力は現地でも高く評価され、大手ブックメーカーの前売りではルクセンブルク、アルピニスタ、トルカータータッソに続き、ヴァデニとほぼ同じ4番人気となっている。
この馬の懸念点は、臨戦過程と展開面にある。凱旋門賞では過去20年間で9月に出走していなかった馬が勝った例は2回しかなく、その2回も7月のキングジョージ5着からぶっつけで巻き返した2010年のワークフォースと、8月のヨークシャーオークスから連勝した17年のエネイブル。いくら調教技術が上がって鉄砲駆けする馬が増えてきたとはいえ、約3カ月の休み明けで勝てるほど凱旋門賞は甘いレースではないということが分かる。
また凱旋門賞を逃げて勝ったのも1996年のエリシオが最後。タイトルホルダーは宝塚記念で2番手から抜け出して勝利したが、あのレースは逃げたパンサラッサが後続を引き離す展開で厳しいハナ争いにはならなかった。競りかけられた際の折り合いと、逃げた際に目標とされる重圧に耐えられるかも勝利へのカギとなりそうだ。
残りの日本馬はというと、ドウデュースは前哨戦の仏G2ニエル賞で4着。叩き台だったとはいえ、残り200メートル付近で脚色が鈍って勝ち負けに加われなかった内容は贔屓目を抜きにすれば高い評価を与えられるものではなかった。9月にひと叩きした臨戦過程は前述のデータからプラス評価だが、今度は過去10年の凱旋門賞で前走がG1以外で3着以下だった馬の連対はなく、3着が1回あるだけというデータが浮上してくる。ちなみに唯一の例外である2018年の3着馬も、前年の凱旋門賞で2着という実績の裏付けがあったクロスオブスターズだった。