ただし優勝したルクセンブルクは別。キャメロット産駒の3歳馬ルクセンブルクはもともと距離が伸びて真価を発揮すると見られていた馬で、英ダービーの前売りでは1番人気に推されていた。残念ながら故障でダービーには出走できなかったが、復帰後は凱旋門賞を目標に10ハロン戦を2連勝してきた。実際に12ハロンを走ったことはまだないが、血統的な裏付けと当初からの目標がぶれてないのは高く評価するべきだろう。
問題は愛チャンピオンSで敗れた2着のオネスト、3着のヴァデニ、4着のミシュリフら。2400メートルの仏G1パリ大賞を勝ったオネストが10ハロン戦に臨んだのは、スピードをアピールして引退後の種牡馬としての箔を付けるためだった。勝ち馬から半馬身差の2着ならその目的はある程度果たせたと言えるが、レース後も次走は凱旋門賞と英チャンピオンSを両にらみとぼかしていた。
3着の仏ダービー馬ヴァデニは、クラシック後も芝10ハロンの英G1エクリプスステークスに向かってミシュリフを撃破。明確に中距離路線をまい進していた。実際、愛チャンピオンSの直後は英チャンピオンSへ向かうことが濃厚とみられていたが、9月下旬になって(つまりバーイードの英チャンピオンS参戦が決まって)から凱旋門賞へ向かう意向を示した。
ミシュリフは昨年、凱旋門賞を登録のみで出走回避。ジョン・ゴスデン調教師は当時、「パリでのタフな12ハロンよりも10ハロン路線を維持すべきだと判断した」と語っていた。12ハロン路線でも21年春のG1ドバイシーマクラシックを勝つなどの実績はあるが、中距離に比べると適性が下がるのは陣営が認めているとおりだ。
つまり以上の3頭は、ルクセンブルクと違って相手関係を判断して英チャンピオンSではなく凱旋門賞を選んだことになる。高い能力は認めても勝ち切るまでは難しいのではないだろうか。
上記以外で前売り上位人気になっているのは、牝馬のアルピニスタと日本勢の大将格であるタイトルホルダー。5歳牝馬のアルピニスタは昨年夏からベルリン大賞、オイロパ賞、バイエルン大賞とドイツG1を3連勝。今年に入ってから仏G1サンクルー大賞と英G1ヨークシャーオークスを制し、12ハロン路線の欧州G1を5連勝とした。