無期懲役求刑の後、田中被告から進藤牧師に送られてきた手紙。画像の一部を加工しています。(提供=進藤牧師)
無期懲役求刑の後、田中被告から進藤牧師に送られてきた手紙。画像の一部を加工しています。(提供=進藤牧師)

 進藤さんは幼いころの田中被告を思い、こう考えを話す。

「生まれながらの悪人というのは、僕はいないと思っています。涼二も、助けが必要な時に誰も助けてくれなかった。組に入るときも止めてくれる人がいなかった。誰かが守ってくれれば、ここまで道を踏み外さないチャンスはあったんじゃないか。だからこそ、心の奥底にある良心を引き出し、罪と向き合わなければいけない。死んで責任を取りたいという気持ちもわからないではないが、それは一瞬の苦しみであり、楽な道だと思っています」

 9月30日に行われた裁判で、検察側は無期懲役を求刑した。そのあとに送られてきた田中被告の手紙にはこうあった。

「生きて罪を償わなくてはいけない、それが子供たちへの償いになる」

 かつて裏切るように姿を消した田中被告への支援。

 それは子ども3人の死から目を背けることを許さず、償いを続けながら生きるという、より苦しい道へと導いたということでもある。

 一審判決は、10月11日に言い渡される。(AERA dot.編集部・國府田英之)

著者プロフィールを見る
國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

國府田英之の記事一覧はこちら
暮らしとモノ班 for promotion
「更年期退職」が社会問題に。快適に過ごすためのフェムテックグッズ