
福岡県内などで養子の男児を虐待死させ、実子2人を殺害した罪に問われている田中涼二被告(43)に、ある牧師が面会を重ね、証人として裁判に出廷している。田中被告は過去に牧師から更生の手助けを受けたものの、借りた金すら返さないまま姿を消した。“裏切り”を受けた牧師は、なぜまだ田中被告を支援するのか。その根底には「罪から目をそらしたままにはさせない」という強い思いがあった。
【写真】9歳男児、3歳男児、2歳女児の3人の子どもを殺害したとされる田中涼二被告
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田中被告をサポートしているのは「罪人の友 主イエス・キリスト教会」(埼玉県川口市)の進藤龍也牧師(51)である。進藤さんは元暴力団組員で、服役中に聖書と出会い33歳で洗礼を受けた。暴力団から足を洗おうと教会にやってくる組員や、元組員らの更生の手助けを続けている。
福岡県に本部がある暴力団の構成員だった田中被告が、進藤さんの教会を訪れたのは9年ほど前のこと。更生を目指していた別の元組員に連れられてきた。その時はキリスト教には興味を示さなかったが、解体現場の仕事を紹介すると、しばらく続けたという。
当時の田中被告の様子を進藤さんはこう語る。
「涼二は足を洗いたいと言いつつも、ヤクザが抜け切れていませんでした。僕にはよく懐いてきたのですが、他にはふんぞり返った態度でね。教会には、涼二とは違う組の元ヤクザたちが何人も来ていましたから、なめられたくないと思ったのでしょう。涼二は妻(当時)にも暴力をふるっていました。私たちの目の前で手をあげ始めて、止めに入ったこともありましたね」
ある時、周囲に悪態をついた田中被告を進藤さんが注意したところ、逆切れして出ていき、そのまま音信不通になった。
だが、数カ月たったある日、田中被告が再び現れた。
「女房に逃げられて言えた義理じゃないけど、金を貸してほしい」
聞けば、妻が大阪の実家に逃げ帰ってしまい、話をしに行きたいのだという。
「7万円を貸したのですが、その後、一切連絡は来ませんでした。解体現場の社長からもまとまった金を借りて、ギャンブルに使っていたこともわかりました。今思えば、大阪にも行かずギャンブルに使ったのかもしれません」(進藤さん)