AERA 2023年1月2ー9日合併号より
AERA 2023年1月2ー9日合併号より

 コロナ禍でオンライン化も進み、例えば選手個人のマネジメントも代理人や代理店なしでやれるし、五輪の協賛企業とも組織委がダイレクトにやれる時代なはず。つまりスポーツ組織もスポンサーが欲しければ、あるいは放映権を売りたければ、企業と対等にやれるんです。そんな時代なのに、新しいビジネススタイルを取れない。そこで電通にやはり依存してしまうということだと思います。

 逆に言えば、コロナ禍でビジネス環境が変わり、広告会社は相当焦っていると思います。今回の談合疑惑では受注企業に複数の広告会社の名前がありますが、「皆しんどいから電通の仕切りで生き延びようぜ」というところかもしれません。

■責任はすべての人に

本間:五輪は巨大なモラルハザードを起こすんです。談合をやったって中抜きしたって贈収賄やったっていいじゃないか、だって国がお墨付きを与えているイベントなんだから──とモラルが吹き飛んでいる。

 今回の談合疑惑でも、普段は死ぬか生きるかの戦いをしている電通と博報堂が「協力」するなんて考えられないことです。しかも博報堂が落札した大井ホッケー競技場での業務など、ほんの小さな仕事。それでも「やれば金になるし、みんなでやるならいいじゃないか」と、五輪モラルハザードでタガが緩んだのでしょう。

杉本:電通や他の広告会社だけに責任があるのではなく、関わったすべての人に責任があると思います。入札で発注業務を担当した組織委の大会運営局には東京都からも出向していますし、都がある程度、監査的な役割を果たしてもよかった。

本間:小池百合子都知事は「自分は関係ない」みたいな顔をしていますけどね。組織委の副会長には副知事がおさまっていたし、組織委の半分以上は都の職員。彼らが談合の話に全然気づかなかったなんてはずがない。

■100年後を見据える

杉本:東京五輪に関して都に欠けていたのは「将来的なビジョン」だったと考えています。開催関連費用も含めて最終的に3兆6800億円に膨れあがったことが批判されましたが、「大会のためだけに」3兆円を投資したから問題なのであって、その投資がこれからの東京都、あるいは日本の社会や経済に何かを生み出す資本の投下だと考えていたならば、批判にはあたらなかったでしょう。たかだか17日間の開催のためだけに施設を作り、あるいは広告を集めるというふうにやってしまったこと自体が、東京五輪の限界だったんです。

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