「4科均等型入試の難関校に絞って、まずはそこから攻めていこうと考えたのです」

 まず狙いを定めたのは、東大や京大に多くの合格者を出す奈良・東大寺学園中と京都・洛星中(現在は算国重視の傾斜配点)。灘中をはじめ難関校の多くは算・国の配点が高いのに対し、東大寺学園中や洛星中は、国・算・理・社の各教科の配点が均一。各教科に「合格最低点」が設定されているわけではないので、四教科の総合点で競い合う。中学受験の肝といわれる算数が苦手な子でも、他教科で高得点を取れば十分巻き返せるので、いろいろなパターンの受験指導が可能となる。

「苦手科目への努力を継続させることも大切ですが、入試の追い込み時期は、得意科目をさらに伸ばして総合点を上げていくことで、難関校で勝負できる戦略を考えることができます」

 結果、両校の合格者数は飛躍的に増え、16年の東大寺学園中の合格者数は浜学園を抜くことになる。

 一方で、社員のモチベーション向上と働き方へのケアも忘れなかった。「塾講師には指導者と経営者の2つのタイプがいます」と吉田氏。塾生の成績を伸ばし、合格者を増やし、予想問題を的中させることに喜びを感じるタイプ。塾生の学習環境を整え、新校舎計画を打ち立て、活気ある塾に成長させていくことにやりがいを感じるタイプの2つに大別されるという。そこで、吉田氏は社員ひとり一人と面談を行い、個々の専門性をキャリアに結びつけていった。社員のやる気は塾の質を高め、塾生の満足度にもつながった。

 そして、今でも吉田氏が重視する校塾連携にも注力した。

「馬渕の強みは、まさに校塾連携にあったと言えます」

 中高一貫校の担当者と密に情報をやりとりすることで、塾側はパンフレットには載っていない学校の魅力を塾生に伝える。一方で学校側は、塾独自の学校説明会を開いたりして塾生と接点を持つことで、志望度の高い受験生を集められる。学校と塾がWIN-WINの関係を築くことを目指した。

「塾生や保護者の信頼、社員の育成、中学校との連携と3つの柱を確立できたからこそ、馬渕教室の今があると思います」

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