この点について山之内氏は、

「暴力団が組長などトップを狙う場合、拳銃を使うのがこれまでの例でも明らか。池田組長を刃物で襲ったのは、警告の意味だったのか。だが、次に拳銃を使っているので、その本気度がよくわかる。一つの襲撃には実行犯以外に5人から10人の後方支援が必要となる。今回は六代目山口組から応援が送られているとの情報もある。拳銃を使って捕まると懲役10年以上となる可能性もある。刃物でケガを負わせれば傷害容疑で済む。背景に抗争があれば刑務所に入っても10年まで。拳銃を使うというのは、六代目山口組がそれほど力を入れて神戸山口組、池田組の息の根を止めようと、攻勢をかけてきた意味だともとれる」

 との見方だ。

 六代目山口組との抗争でこれまで反撃となる「返し」にほとんど動いてこなかった神戸山口組と池田組。今後の動きについて、ある捜査関係者はこう話す。

「六代目山口組の圧倒的な“戦闘力”を前に、神戸山口組も池田組も返しは難しい。反対に六代目山口組のヒットマンが、トップの井上組長を狙うことも考えられる。これ以上の抗争拡大は止めなければならない。井上組長ら神戸山口組幹部には、べた張りで警戒し、防ぐしかない。ただ、六代目山口組の篠田建市(通称・司忍)組長の出身母体である弘道会も裏で抗争支援をしているとみられ、深刻化するのではないか」

 一夜にして暴力団の抗争に震え上がったのは、近隣住民だ。最初の襲撃があった理髪店近くで商売をする男性は、

「事件から5分ほどで店を見にいくと、すごい血が流れているのが見えた。こんな近くで、信じられないような事件が起きて恐ろしい。せっかくコロナも落ち着いてきて、街にもにぎわいが戻りつつあったのに……」

 と語る。

事件直後、現場の理髪店で駆けつけた警察官に現場で取り押さえられる男
事件直後、現場の理髪店で駆けつけた警察官に現場で取り押さえられる男

 岡山の街を恐怖に陥れる両者の抗争。終えんはいつなのか。

 (AERA dot.編集部・今西憲之)

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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