がんと診断されて「頭が真っ白になって、そのあと何を言われたか覚えていない……」。そんな人は多くいます。想定していなかったことに気が動転してしまうのも当然です。しかし、いつまでも動揺していられないこともあります。病院選び、治療法の選択、治療中の生活や仕事への対応など、考えなければならないこと、おこなうべきことがたくさんあります。
あらかじめ何をすればよいか知っていることで、自分に合った治療や支援を受けることができます。そこで今回は、国のがん対策の一環で整備が進んでいる「がん診療連携拠点病院」(がん拠点病院)や相談窓口について、国立がん研究センターがん対策研究所がん情報提供部の高山智子部長に聞きました。Q&A形式で前編後編の2回に分けて解説します。
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Q がん診療連携拠点病院(がん拠点病院)とは何ですか?
A 専門的ながん医療を提供するだけでなく、患者に寄り添った支援や相談対応などの体制を整えた病院です
がんの治療には、高度な技術や知識・経験をもつさまざまな専門職者や設備が必要です。また、治療を継続するためには、生活、仕事、お金など多岐にわたる困りごとや、不安や落ち込みといった精神面に対するサポートも欠かせません。そこで、質の高い専門的な治療と相談に対応する窓口、さまざまな支援を提供する体制を整えた病院が「がん診療連携拠点病院」です。
今から15年ほど前に、がんになる人を減らす、がんになっても苦痛なく、暮らしやすい社会にすることを目指して、「がん対策基本法」(2007年4月1日施行)が誕生しました。「誰もが等しくがん医療を受けられるように病院を整備すること」が定められ、国ががんになった人に対して専門的な対応ができるように、人員や設備、診療実績などの要件を定めて、全国各地の病院を指定したのが「がん診療連携拠点病院」です。このがん診療連携拠点病院では、「専門的ながん医療の提供」「地域のがん診療の連携や協力体制の整備」「患者・住民への相談支援や情報提供」などの役割を担っています。