コロナ禍の中で注目された「かかりつけ医」だが、どんな病気についても相談にのってくれる「かかりつけ医」は日本にはまだ少ない。病気ごとに専門の診療科にかからなければならないからだ。そうした中で注目されているのが、総合診療を専門にする開業医だ。多摩ファミリークリニック院長の大橋博樹医師もその一人。赤ちゃんから高齢者まで、すべての世代を診療し、在宅医療にも取り組んでいる。同医師は総合診療医の育成に取り組む日本プライマリ・ケア連合学会理事でもある。かかりつけ医をとりまく問題、いいかかりつけ医の条件などを聞いた。
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「一般の人がイメージする、かかりつけ医は、『家族のからだのことまで、なんでも相談できる医師』という場合もあれば、『話をあまり聞いてくれずに、薬を処方してくれるだけの医師』など、さまざまだと思います。実際、それだけ幅があるのが現状ですが、かかりつけ医の必要性が高まる中、これを変えていかなければいけない。『かかりつけ医がここまではしっかりやりますよ』ということを明確に定めなければならない時期にきていると思います」
と話す大橋医師。
大橋医師は、医学部在学中から総合診療のできる家庭医をめざしていたという。
当時は大学病院に総合診療を学べるプログラムがなく、卒業後はプログラムを持つ市中病院に出て研修を受け、複数の病院の総合診療科を経て、2010年に現在のクリニックを開いた。
場所は神奈川県川崎市多摩区。都心に近く人口も多いが、かつては農村地帯だったこともあり、3世帯で暮らす家庭も少なくない。赤ちゃんから高齢者までを診療し、在宅医療もおこなう、かかりつけ医として従事している。
かかりつけ医のあるべき姿として大橋医師は、
「幅広い病気や不調を診ることができ、なんでも相談できる医師が今、国民に求められていると思います。日本プライマリ・ケア連合学会としては、家族全体を診ることができる能力を持つこと、在宅医療、さらに看取りもできる医師の養成をめざしています」
と話す。