大きな病気で手術が必要になったとき「インターネットなどを使って、自分で手術のうまい医師を探せるから大丈夫」と思っている人も多いかもしれない。しかし、大橋医師は、こう言う。

「否定はしないけれど、かかりつけ医を使わないのはもったいない。また、患者さんが名医と思っている医師と実際とは乖離(かいり)があることも多いです。前立腺がんの患者さんから、『〇〇大の教授を紹介してよ』などと言われることがよくあるのですが、その教授は確かに泌尿器の病気を診ているけれど、専門は男性不妊症だったりすることがあります。ネットの情報やランキング本を一緒に見ながら、『どこがいいかな』と話し合えればいいと思いませんか?」

 大きな病気の場合、治療は専門医に任せる一方、かかりつけ医は周囲の困りごとの対応を担当するのだと言う。

「主治医の話がわからないと相談されれば、その内容をわかりやすく、解説しています。医療用語は一般の人にはわかりにくいので、かかりつけ医は通訳のような存在と自覚しています」

 乳がん患者から、薬物治療の副作用の相談を受けることも多い。

「乳がんは30~40代の子育て世代に多く、『子どものイベントに行くときにウィッグをつけたくない』『吐き気でお弁当を作れないのは困る』などの相談があります。その場合は、抗がん剤をおこなう時期をずらすことなどを検討し、治療先の主治医に要望を伝えます」

 なお、乳がんの術後ホルモン療法など、クリニックでできる薬物治療もあるという。

 がんなどの場合、進行度によっては、在宅医療が必要になることもある。最近は在宅医療に取り組むかかりつけ医が増えており、このようなときに頼りになる。

「かかりつけ医がいない場合、病院から看取りを目的とした在宅医療の医師を紹介されることが多いのですが、そこで、『はじめまして』となるよりも、スムーズにいくことは多いと思います。かかりつけ医であれば患者さんやご家族も気心が知れているので、最期のときをどう迎えるかなどもしっかり話し合えますからね」

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