年俸1億8000万円から「1軍最低年俸(1500万円)でも構わない」と自ら大幅減額も辞さない覚悟を示したのが、阪神・西岡剛だ。
15年のシーズン中に右肘を痛めた西岡は出場50試合にとどまり、打率.260、2本塁打、14打点と、思いどおりにチームに貢献できなかった。このため、年俸1億円以上の選手では、減額制限ギリギリの40パーセントダウンの1億800万円を提示されるとみられていた。
ところが、契約更改を前に複数回の下交渉を重ねるなかで、西岡が球団に「自分を極限まで追い込むため」と、1億円を超えるダウンを申し出ていたことが明らかになる。
金本知憲新監督が就任し、二塁の定位置も確約されていない状況下で、1軍の最低年俸選手として心機一転再出発を誓う意気込みの表れだった。
これに対し、球団側は西岡の“男気”を理解しつつも、他の選手とのバランスの問題などから希望を受け入れるのは難しいとして、当初の想定どおり、7200万円ダウンの1億800万円を提示。西岡も12月4日、この条件でサインした。
「まだ球団の『必要なんだ』という気持ちが伝わりました。マスコミの記事で悲壮とか背水という言葉を聞くけど、僕はまったくそういう気持ちはない。非常に楽しみな気持ちです」と巻き返しを誓った西岡だったが、翌16年7月20日の巨人戦で左アキレス腱を断裂し、14年開幕直後の大けがも含めて、3年続けて不運なけがに泣いた。
一時は引退も決意した西岡は、17年に奇跡の戦列復帰をはたすが、完全復活を実現できないまま、18年限りでNPBを去った。
最後は自ら10分の1の大減額での移籍を選びながら、再び1億円プレーヤーに返り咲いた男を紹介する。今オフ、広島の新監督に就任した新井貴浩だ。
阪神移籍7年目の14年、打率.244、3本塁打、31打点と不本意な成績に終わった新井は、年俸2億円から1億3000万円ダウンの7000万円を提示されると、「もう1回競争できる環境に身を置きたかった」と自由契約の道を選び、阪神の提示額より5000万円も安く、旧年俸の10分の1に過ぎない2000万円という異例の条件で古巣・広島に復帰した。