コロナ禍で注目された「かかりつけ医」だが、どんな病気についても相談にのってくれる「かかりつけ医」は日本にはまだ少ない。病気ごとに専門の診療科をかからなければならないのが現状だ。そんななか、女性の健康をサポートする「かかりつけ医」を目指す医師たちのグループがある。NPO法人「女性医療ネットワーク」だ。その理事長で、「ウィミンズ・ウェルネス対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座」院長の対馬ルリ子医師は、「女性は男性とは異なる心身の健康リスクがある。女性のからだに詳しい医師をかかりつけ医にできれば理想的」と言う。その理由を詳しく聞いた。
* * *
対馬医師は東大病院で研修後、東京23区の東部を支える基幹病院である東京都立墨東病院総合周産期センターの産婦人科医長に。ハイリスク妊婦や新生児などに対する高度医療に16年余り従事した後、2002年に現在のクリニックを開院した。女性を対象に総合診療をおこなうクリニックで、婦人科だけでなく、内科や乳腺科、泌尿器科なども併設されている。「かかりつけ医として女性の一生の健康をサポートしたい」という長年の思いを形にしたと言う。
「私はもともと、望まない妊娠や中絶、DVなどで悩み、困っている女性を助ける仕事がしたいと思い、産婦人科医になりました。臨床医として患者さんに接する中で、女性は男性とは違う心身の健康リスクがたくさんあること、それによって、多くの女性が仕事や家庭生活に支障をきたし、つらい思いをしている事実を目の当たりにしたのです」
男性の病気は生活習慣病やメタボリックシンドロームがメインであるのに対し、女性はホルモンの変動によってからだに変化が起こりやすく、若いときからさまざまな不調に悩まされることが珍しくない。「これが男性とは大きく違う点」と言う。
例えば思春期では月経痛やPMS(月経前症候群)、結婚後は不妊治療も含め、妊娠・出産にかかわるトラブル、閉経前後には更年期症状。高齢では骨粗鬆症(こつそしょうしょう)。にもかかわらず、日本は臓器別に診療科が分かれているので、症状ごとに複数の医療機関を回る、ドクターショッピングをする女性が多いのだ。