「更年期女性がその代表です。多様な症状が起こるので、『動悸(どうき)で循環器内科』『胃の不調で消化器内科』『不眠で精神科』といったかかり方をせざるを得ない。しかし、異常が見つからなければ、『悪いところはない』『年のせい』などと言われ、突き放されてしまう。行き場を失って、ますます不安になるのです」
これらの症状や病気の診療は実は産婦人科が専門だ。ちなみに産科は妊娠して出産する人のための検査や治療をおこない、婦人科ではそれ以外の子宮や卵巣を中心とした女性特有の病気を診る。
ただし、女性にはこのほか、甲状腺の病気や、関節リウマチなどの膠原病(こうげんびょう)といった内科の病気、尿失禁など泌尿器の病気、乳がんなど他の科で扱う病気もたくさんある。つまり、産婦人科という領域だけでは、女性のからだをすべて診ることができないので、女性のからだを総合的に診る医師が必要だと、対馬医師は考えた。
「同じ考えを持ち、開業をしている医師は増えてきています。女性には若いうちから、このようなかかりつけ医を持つことをすすめます。かかりつけ医からは診療を通して、『女性のからだの特徴』についても学べるので、ヘルスリテラシー(健康や医療に関する正しい情報を入手し、理解して活用する能力)が高まります。この結果、望まない妊娠や性感染症のリスクも減らすことができると思います」
フランスでは月経が来たら、婦人科のかかりつけ医を持つことが一般的で、10代からピルの処方などで定期的に受診し、からだの相談にものってもらうという。
「イギリスやカナダなど、診療所の医師であるGP(general practitioner)がかかりつけ医を担うことが制度化されている国では、かかりつけ医が助産師と連携し、子宮頸がん検診やHPV(子宮頸がん)ワクチンの接種をおこなっています。日本はこうした国から見れば、大きく後れをとっているといえるでしょう」