医学部を舞台にしたマンガ『Dr. Eggs』(三田紀房、「グランドジャンプ」で連載中)がある。とくに医師になりたいわけではないが、高校の担任の先生にすすめられるまま地方の国立大学の医学部へ入った主人公の医学部生活を描く。近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師は、AERAdot.連載担当編集者からこのマンガを紹介されて読んでみた。
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大学の医学部は授業内容が他の学部と全く異なります。医学部を卒業して国家試験に合格すればすぐに医師として働くわけですから、知識と技術を身につけた上で現場に出なければなりません。医学部の6年間は医者になるための期間で無駄なく勉学に励む必要があります。勉強量が多いだけではなく、実習や精神的なストレスも大きいのが特徴です。
医学部を目指す人たちは、みんな医者になりたくて医学部を希望した、と思うかもしれませんが、最近は高校時代に学力が高かったため、高校教師や両親にすすめられて医学部に入る学生もいます。私が医学生だった20年以上前は、そういう学生は学年に1人か2人いる程度だったのですが、最近では珍しくない数の医学生が勉強ができたからという理由で医者になります。こういった学生がその後、どうやって医者になっていくのか一般の人は気になるところかと思います。
『Dr.Eggs』は、高校時代に勉強ができたという理由で医学部に入学した円千森(マドカチモリ)くんが主人公のマンガです。作者は『ドラゴン桜』でおなじみの三田紀房さん。Dr.Eggsでも若者が成長していく様を丁寧に描写し、それでいて社会の仕組みを冷徹に観察するのが得意なマンガ家さんです。私もDr.Eggsを読みましたが、内容は実にリアルでした。解剖実習での様子は怖いくらいに生々しく、自分が経験した実習を思い出しました。特に実習中に体についたホルマリンのにおいがシャワーを浴びても消えないところなど、経験した人でなければわからないことも書かれています。