がんの進行度で最も進んだ状態を示す「ステージ4」。固形がんでは、がんが転移していることを指す。転移はなぜ起こるのか、転移とどう向き合っていくべきなのだろうか。専門医を取材した。
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がんを手術などで治療したにもかかわらず、同じがんが再び出てくることを「再発」という。原発巣(がんが発生した場所)やその周辺の領域リンパ節に出てくる「局所再発」だけでなく、離れた臓器や骨に出てくることもあり、これを「(遠隔)転移」と呼ぶ。最初にがんが見つかったときにすでに転移している場合もあり、進行度合いを示す4段階のうち最も進行した「ステージ4」と診断される。がん研有明病院院長補佐・乳腺内科部長の高野利実医師は言う。
「転移は、がん細胞という小さな『種』が血流に乗って全身に広がり、別の場所に根付いて芽を生やした状態です」
検査で転移がないことを確認した上で手術をしたのに、なぜ術後に転移が見つかるのか。高野医師はこう続ける。
「肉眼やCT(コンピューター断層撮影)の画像で確認できるようになるのは、がん細胞のかたまりが1億~10億個分くらいに成長してから。手術の時点ですでに転移の種は全身にまかれていて小さな芽を生やしていた可能性もありますが、検査ではわからない状態だったのだと思います」
がん細胞が血流に乗っていたとしてもそれらがすべて転移を起こすわけではなく、手術後の薬物療法で消えたり、免疫などの働きで転移が阻止されたりもする。しかしそれでも生き残ったがん細胞が、のちのちどこかに根付いて、ある程度の大きさのかたまりを形成したときに、「転移」となって現れる。
■がん種ごとに好発部位がある
一般に、転移のリスクは原発のがんが進行しているほど高い。ただし比較的早い段階から転移しやすい性質を持っていることもある。東北大学病院緩和医療科教授の井上彰医師はこう話す。
「原発のがんの悪性度(タチの悪さ)も影響します。膵臓がんや小細胞肺がんのように悪性度が高いがんは進行が速く、最初にがんが見つかった時点で転移していることが多い。同じがん種でも、悪性度が異なる場合もあります。また、よく『若いと転移しやすく、高齢者は転移しにくい』などと言われますが、そうとも言い切れません」