がん薬物療法で使われる薬の種類と特徴
がん薬物療法で使われる薬の種類と特徴

「転移はあるもののからだの各所に多数広がっている状態ではない、すなわち転移のない状態と多発転移がある状態との中間的な病態を『オリゴメタ(少数転移)』と呼んでいます。オリゴメタでは各転移巣に積極的な治療をすることで、病気の進行を遅らせたり、生存期間を延ばす可能性があることが示唆されています」

■少数転移には積極的な治療も

「少数個」の目安は、全身に5個以下。手術で切除するとなるとからだの負担も大きく、部位によっては機能障害などのリスクをともなうが、放射線治療であれば比較的負担が少なく、挑戦しやすい。

 これまでも転移したがんに対して、痛みなどの症状を緩和するための放射線治療がおこなわれてきた。緩和照射では重い副作用が出ない程度に線量を抑えるが、オリゴメタの治療では、「根治」に必要な線量を照射する。そのため、高線量をピンポイントで病巣に集中できる「定位照射」という照射法が、比較的安全な上に局所治療効果が高く、適している。20年からは、5個以内のオリゴメタに対する定位照射に保険が適用された。溝脇医師は言う。

「これまでに有望な試験結果はいくつか報告されています。しかし、効果を検証するための臨床試験が多数実施中であり、現段階では、無再発期間や生存期間が延長することは証明されていません」

 転移を見つけるための画像診断能力には限界があるため、本当にオリゴメタか否かの判別が難しいという問題もある。画像診断時には見えなかった再発や転移が、治療後に出てくることも多い。溝脇医師はこう話す。

「現時点では、転移がんの標準治療となっている抗がん剤などの薬物治療を受けた上で、担当医と十分に相談し、オリゴメタの治療を追加したほうがいいかどうか判断するのが適切なアプローチだと考えています」

(文・谷わこ)

※週刊朝日2022年11月25日号より