※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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がんの進行度で最も進んだ状態を示す「ステージ4」。固形がんでは、がんが転移していることを指す。がんが進行し、他の臓器などに遠隔転移すると、治療方針が変わってくる。がんそのものに対する治療は、抗がん剤などによる薬物療法が中心になるが、医師は「治療の目標を明確にすること」の重要性を訴える。

【データ】がんの転移、主な症状は? 診療科は?

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 がんができた場所(原発巣)から離れた臓器や骨に見つかる「遠隔転移」は、転移の種が体中にばらまかれていることを意味する。見つかった遠隔転移だけを取り除いても、体中のがんを消すことにはならないため、手術などの局所療法は積極的にはおこなわず、抗がん剤などによる薬物療法が治療の中心になる。がん研有明病院院長補佐・乳腺内科部長の高野利実医師はこう話す。

「固形がんが遠隔転移した場合、薬物療法でもがんをゼロにするのは困難です。がんがゼロになっていなくても、良い状態で長生きすることのほうが重要。それを目指して治療方針を考えればよいのではないでしょうか」

■効果と副作用のバランスが重要

 転移したがん細胞は原発巣と同じ性質を持っているため、薬物療法では原発巣に準じた薬が使われる。例えば乳がんの肺転移では、肺がんではなく原発の乳がんに効果がある薬で治療する。

 薬の進歩は目覚ましく、「従来型抗がん剤(殺細胞性抗がん剤)」に加えて、「分子標的薬」「免疫チェックポイント阻害薬」といった比較的副作用の少ない薬も登場し、薬の組み合わせのバリエーションが増えた。また、前立腺がんや乳がんなどでは、ホルモン剤による治療がおこなわれることもある。

 治療で期待される効果は、延命と症状緩和だ。抗がん剤はつらいイメージが強いが、呼吸困難などの症状がやわらぎ、普通に日常生活を送れるようになることが少なくない。

 一方、副作用は必ずある。薬の種類や量を調節したり、副作用を軽減する薬を使うなど対策(支持療法)は進歩しているが、それでも副作用を抑えられず、QOL(生活の質)が低下したり、逆に命を縮めてしまうこともある。高野医師は言う。

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プラス(治療効果)とマイナス(副作用)のバランス