そして各記者は、MVPのあり方についても言及。ウォード記者は次のように意見する。
「アーロン・ジャッジは(ア・リーグの本塁打)記録を塗り替え、MVPにふさわしい選手ですが、彼は一度もピッチングをしていません。とはいえ、今季の大谷選手はジャッジが打席でやったようなことはしていないので、実際にどちらがより素晴らしいシーズンを送ったかは、今後も議論が続くでしょうね。ただ、私は、”Value”(価値)というのは、(投票する記者たちの)私見以外では測れないものなので、この賞の文言は変える必要があると主張したいですね。確かに選手の価値はWAR(投球、打撃、走塁、守備を総合的に評価し、選手の貢献度を数値化したもの)などの高度な指標で区別することができます。たしかにジャッジのWARは高かかったが、大谷選手のように二刀流ではないので、正直どちらが優れているなんて言えません」
このように、ウォード記者は今回の結果を踏まえ、今後は様々なポジションの選手を公平に評価できる方法を考えていくべきだと主張する。
「2022年の野球界で最高の選手は大谷翔平だと思うが、(現在のような)個人賞で括ってしまうと、大谷選手に賞を与えることが出来なくなる。たとえ、他のどの選手よりも努力し、高いレベルでプレーしていてもです。大谷選手は去年(2021年)にすでにコミッショナー賞を受賞していますが、今年の方が同賞にふさわしいぐらいです。とにかく、今年の彼が無冠ということに納得がいきません。もっとも、彼は賞にこだわっているわけではないようなので、今回の結果が今後に影響することはないでしょうが。しかし、22年に彼の活躍に対しては何かしら表彰されるべきです。それぐらいチャンスは十分にありました」
前出のシスネロス記者も同じような主張を述べた。
「昨今、選手にとって個人の称賛は陳腐化しつつあります。私は大谷選手はMVPに値する選手だと思いますが、個人を称えることが無価値になる時期が来るかもしれません」
今年のMLB争いは、最後の最後まで多くの論争を巻き起こした。現在のアメリカの投票方法や選考基準が、大谷という唯一無二の存在とその並外れたパフォーマンスに追いついていないや、歴史的な活躍が形に残らなかったと、憤りを感じる現地識者は多かった。(澤良憲/YOSHINORI SAWA)