AERAで連載中の「あたしンち」の単行本第2弾「あたしンちSUPER第2巻」(けらえいこ)は、オール新作、オールカラーの62話を収録して税込み990円で大好評発売中!
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 一方、もう一つのファン層は、40~50代の子ども世代である10~20代の読者。02年に始まった「あたしンち」のアニメで育った世代で、感情移入の対象も、みかんやユズヒコから、自身が大人になるにつれ、父母に変わっていくことが多い。

 大阪府に住む会社員の岡本真奈さん(29)は、小学生のときに近所の書店でたまたま出合って以来、「あたしンち」のとりこに。楽しいときも、悲しいときも、繰り返し、この漫画を読んできた筋金入りのファンだ。小さいときは、娘の「みかん」目線、家庭を持ってからは母や父の大人目線で、「あたしンち」の“わかるわかる!”や“あるある!”を楽しんできた。

 この漫画で何より好きなのは、誰もが見逃してしまうような、「日常の細かいことをすくい取っている」こと。とくに大人になってから読み返してみると、実は自分の身の回りにも、タチバナ家と同じ、愛おしい日常がたくさん転がっていることに気づかされたという。

「自分の毎日を考えると、例えばネットニュースで報じられる過激なニュースに、驚いたり、怒ったり、笑ったり。そんな大きなできごとに目を向けて、自分の身の回りのささいなできごとはスルーしがちでした。でもタチバナ家のように日常に目を向ければ、もっと毎日が楽しく過ごせると思うようになったんですよね」

■タチバナ家の誰かのように

 岡本さんにとって、最近の「愛おしい日常」は、通勤途中の風景だ。例えば、毎日見ていたはずの通勤途中の川に、何羽かのカモがいることを発見。

「そんなカモたちをタチバナ家の誰かのようにじっと見て(笑)、あれこれ思いを巡らせる。そんな自分の日常に、小さい幸せを感じています」

「あたしンち」は、心のデータ容量をネットの刺激的な情報だけで埋めてしまいがちな自分を戒めてくれる、「日々を愛する教科書」のような存在となっている。

 読者カードの熱いメッセージのなかには、「あたしンち」にいつも笑い転げているという小学生や10代から寄せられたものもたくさんあった。ささいな日常の愛おしさは、時代も世代も飛び越えるのだ。

(ライター・福光 恵)

※AERA 2023年3月6日号