AERA連載をまとめた『あたしンちSUPER 第2巻』が発売された。時代に合わせアップデートした”令和版”あたしンちの魅力とは――。
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うっかりマスクを忘れて外出したり、ネットの赤ちゃん動画にハマったりする母、フードデリバリーサービスを利用しようとスマホと格闘する父……。2019年末からAERAで連載が始まった「あたしンち」は、これまでの「あたしンち」にはめったに出てこなかった時事ネタが満載だ。
「東京スカイツリーはもうあるのに、家の電話はなんで黒電話?」など、何かとネットからツッコまれている「サザエさん」の磯野家をはじめ、多くのご長寿漫画やアニメが、どんどん進んでいく時代との調整に苦心している。
■華麗なるアップデートに驚き
そんななか、華麗なるアップデートを果たした令和版「あたしンち」。1994年から読売新聞日曜版で連載され、12年3月の連載終了から7年のブランクを経て帰ってきた令和版は、読者にどんなふうに受け止められたのだろう。連載をまとめた『あたしンちSUPER 第1巻』(21年11月発売)に寄せられた数千枚の読者カードなどから、読者の声をあらためてまとめてみた。
設定のアップデートに関する読者の意見で目立ったのは、まず「驚き」。スマホなどでDX化されて帰ってきたタチバナ家に一瞬戸惑いながらも、母のマスクネタに親しみを感じた人は多い。AERAでの連載開始時期が、ちょうど新型コロナの拡大時期と重なったせいもあるのだろう。自分たちと同じように、日本のどこかでコロナ禍をがんばって乗り切ろうとしているタチバナ家を、「これまで以上に身近に感じた」という声は、各世代の読者の多くが書いていた。
朝日新聞出版書籍編集部によると、読者カードなどから見える読者のボリュームゾーンは、大きく二つ。まずひとつは、連載が始まった当初、タチバナ家のような、ごく普通の家庭に共感したり、憧れたりした、現在40~50代の読者だ。
■あるある!を楽しんできた
20~30代女性の新しい結婚観を描いた「結婚しないかもしれない症候群」という本やドラマがヒットしたバブル期。そのトレンドの逆を行くように、楽しい結婚を描いたのが、「あたしンち」の前身ともいえる、けらえいこさんの『セキララ結婚生活』などのコミックエッセイシリーズだった。40代、50代からの読者カードには「セキララシリーズからのファン」というワードもよく出てくる。