今後、プラスチックに包装された食べ物をなくしていく。飢餓をなくしていく。農薬害に苦しむ子どもたちのことを考えなおす。パーム油やバナナ、アボカドの農園のために熱帯雨林を切り開くことを減らしていく……。こういった運動は、実は、枝元さんがこれまで伝えてきた「食べ物を楽しむ」こととつながっていると、僕は思っているんです。それができるのは、料理の現場にいる人だと思います。

 だから今回は、料理という文化が人類にとって本当に大事で欠かせないということ、その楽しさをみんなで味わおうよということを、枝元さんとお話しできればと思っていました。楽しく食べることと、誰かを傷つけずに食べることは、実は両立するし、両立させなくてはいけないことなんだと。

 お話ししたいことのひとつは、プラスチックと防腐剤というものがなければ、つまり食べ物が個別に商品化されることがなければ、これだけ大量の食料廃棄が起きることはないという根源的な部分。さらに根源的なのは、日本人が年間で捨てる食べ物の金額を合計すると、日本列島の年間の農業生産額よりも2兆円多い(注2)という現実。農家を侮辱しているというか……要はつくったものをすべて捨てているのに等しいという、わけのわからない経済システムになっています。私は、ちょっとずつでもロードマップをつくってそれを変えていけるようにと願って、『分解の哲学――腐敗と発酵をめぐる思考』(青土社、2019年)などを書いてきました。枝元さんとは、そういう大きな話と小さい話の両方をしていきたいと思います。

(構成/保田さえ子)

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注1) 東京オリンピック開会式(2021年7月23日)の会場で、大会関係者用に準備された弁当約1万食分のうち、約4000食分が処分された問題。
注2) 京都市の試算によると、1世帯(4人)あたりの年間の食品廃棄量を金額換算すると約6万円、処理費用約5000円を足すと6万5000円となる。これを全国換算すると11.1兆円となる(井出留美『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』幻冬舎、2016年)。日本の農業総産出額(2020年)は8兆9370億円(「農業総産出額及び生産農業所得(全国)」農林水産省)。

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