伊勢崎:実は、北欧の国ノルウェーが日本に注目しているのです。いま地球温暖化の影響で北極海の氷が急速に解け始めており、新たな戦争の火種になっています。今までのように原子力潜水艦だけではなく、他の艦船も通れるようになると安全保障上のリスクが高まります。特に、北部でロシアと国境を接するノルウェーは危機感が強い。武力衝突が起きたら大変なことになります。ですから、同じ緩衝国家である日本に関心を持っていて、私もオスロ国際平和研究所や大学などのシンポジウムに呼ばれています。
今度、ノルウェー北部にある大学から、同じくロシアと接する北欧諸国と日本や韓国の研究者が集まって、緩衝国家の立場から対話による平和を世界に発信する会議を開催したいという打診を受けました。東郷さん、会議に参加していただけませんか。
■欧州戦争の危機忠告すべき立場
東郷:いやいや(笑)、私には十分な影響力もありませんので。私は常々、外交はタイミングが重要だと考えてきました。岸田(文雄)氏とそのブレーンに知恵があれば、今こそ動くチャンスです。バイデン氏の泣きどころは戦況がさらに悪化し、ロシアとNATOが直接対決するヨーロッパ戦争に発展すること。そのレッドラインに踏み込んでしまった時、バイデン氏は怖くて動けなくなる可能性がある。岸田氏は「このままでは大変なことになりますよ」と同盟国として忠告すべき立場にあると思います。
木村:岸田政権はバイデン氏と歩調を合わせ、ロシアに対して強硬姿勢を取り続けてきたことで国益を損なっています。ロシアは対抗措置として、現在の条件下において日本との平和条約交渉を行わない、北方4島へのビザなし交流を停止すると通告してきた。01年にプーチン氏との間で北方領土返還交渉を促進するためイルクーツク声明を採択した森喜朗元首相が「(ロシアとの良好な関係を)積み立ててきたのに、こんなにウクライナに力を入れちゃっていいのか」と疑問を呈したのも、私には頷けます。