開幕前は風邪による主力数人の体調不良が報じられたが、ボールを走らせ続けた第1戦での体力的消耗度は低く、ドイツ戦でも数人のメンバーを入れ替えながら“ほぼベスト”の状態で臨める。得失点差のアドバンテージがあるためにグループステージ突破だけを考えれば「引き分けでもOK」だが、決勝まで勝ち上がるためには第3戦での“休養”は重要であり、ルイス・エンリケ監督の性格を考えても全力で「勝ちに行く」だろう。

 一方のドイツは、第1戦の日本戦で1対2のショッキングな逆転負け。多くのチャンスを作りながらも最後のシュート場面で“力み”が見えるとともに、後半に入ってから選手交代の度にチームの動きが鈍化。特にミュラー、ムシアラの2人がベンチに下がってから攻撃の機能性と迫力が大きく低下した。多くの選手の運動量も落ちたことから、中3日の中で精神的にも肉体的にもどこまで立て直すことができるか。本来は左ウイングのレギュラーでありながら膝の負傷で日本戦を欠場したサネの状態がどうか。1トップに誰を置くかも重要だ。

 本来はポゼッション・スタイルのチームだが、スペインを相手にボール支配率で上回るのは極めて困難。前線から高い強度でゲーゲンプレスを仕掛けて“ブスケツ封じ”からのショートカウンターを狙うか、もしくは割り切ってDFラインを下げ、5バック気味に守ってスペインのサイド攻撃を封じた上で、ムシアラ、ニャブリ、あるいは18歳のムココのスピードでスペインの弱点である“センターバックの裏”を狙うか。フリック監督がどのような戦術プランを持って臨むのかに注目だ。

「技術とパスワーク」のスペインと「肉体的な強さとスピード」のドイツ。近年の相性に加えて、現時点でのチーム完成度は間違いなくスペインの方が上だが、ドイツには「最後にはドイツが勝つ」と言われた土壇場での精神力がある。スペインの“ティキ・タカ”か、ドイツの“ゲルマン魂”か……。日本対コスタリカ(日本時間27日19時)の試合終了から約9時間後(同28日4時)に始まる元W杯王者同士の注目の対決は、日本の2大会連続4度目の「ベスト16」および、まだ見ぬ景色の「ベスト8以上」へ向けても重要な一戦。生粋の“ドイツ好き”と余程の“スペイン嫌い”でない限り、スペインの勝利を願いながら、目を擦ってでも見るべきだ。(文・三和直樹)