許、張、チェンはいずれも若い時に来日しており、彼らのような成長を期待してNPB入りする選手が増えたが、その中で一軍の戦力になっている選手は非常に少ない。2010年以降の成功例と言えるのは2016年に入団した宋家豪(楽天)くらいで、大半の選手は一軍でほとんどプレーすることなく日本を去っている。

 またここまで挙げた成功例から見ても分かるように、活躍しているのは投手ばかりで、野手は苦しんでいるのが現状である。林威助(阪神)、陽岱鋼(日本ハム巨人)、呉念庭(西武)は一軍の戦力となっているが、3選手は日本の高校、大学を経てプロ入りした選手であり、純粋な外国人選手扱いの台湾出身の野手で最後に強いインパクトを残したのは1988年に来日した呂明賜(巨人)ということになりそうだ。

 しかしだからと言って今後も台湾出身の選手が苦戦し続けるかというと、そうとは限らない。2019年にはU18W杯で優勝を果たし、今年の大会でも準優勝するなど、育成年代のチームは国際大会で結果を残し続けている。長年、打高投低が続いていた国内リーグも昨年から低反発のボールに変更し、ホームランが激減したことが話題となった。長打が出づらい状況でホームランを量産できるような選手が出てくれば、NPBでも結果を残す可能性は高くなるだろう。

 また、2019年には楽天がLa Newから球団を買収し、翌年からは楽天モンキーズとして参入。今年のドラフトでは楽天が育成4位で台湾の大学でプレーしていた永田颯太郎を指名するなど、台湾との繋がりを強くしている印象を受ける。他球団からも台湾の有望な若手選手を再び狙う動きが出てくることも十分に考えられるだろう。

 1980年代から90年代にかけては郭源治(中日)、郭泰源(西武)の2人が大活躍したが、今後は投手だけでなく、野手でも日本球界を席巻するような台湾球界出身の選手が出てくることを期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文 1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

著者プロフィールを見る
西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

西尾典文の記事一覧はこちら
暮らしとモノ班 for promotion
【フジロック独占中継も話題】Amazonプライム会員向け動画配信サービス「Prime Video」はどれくらい配信作品が充実している?最新ランキングでチェックしてみよう