しかし、文科省はそのような行為を、次のように戒めている。
「現行の(観点別学習状況の評価の)『関心・意欲・態度』の観点について、挙手の回数や毎時間ノートをとっているかなど、性格や行動面の傾向が一時的に表出された場面を捉える評価であるような誤解が払拭しきれていない」(「新学習指導要領の全面実施と学習評価の改善について」2020年。かっこは筆者)
待谷さんはこう語る。
「いかに生徒の『関心・意欲・態度』という部分をきちんと評価してあげるか。これは難しい課題です。例えば、挙手をしない子はやる気がないのか、というと、そんなことはありません。意欲的に静かに考えている子もいます。家でものすごく勉強しているかもしれない。提出物をきちんと出しても、実は適当にやっているだけかもしれないですし」
今回、内申書の取材を通じて最も強く感じたのは教員の仕事量があまりにも多いことだった。
そのような状況のなか、待谷さん、そして同僚の國井翼さんも、中学校で他の教員とともに日々の授業での生徒の評価基準を揃えようと話し合い、それを実施しようとしてきた。
■定期テストでの評価に
しかし、「結局、無理でした。なかなかテスト以外で評価するのは難しかったです」と、國井さんは打ち明ける。
待谷さんはどうだろう?
「私も完全に定期テストの点数になってしまいました。本当は普段の授業のなかで生徒を評価しなければならない。でも毎日、担任としていろんな生徒をフォローしながら授業をやっていくなかで、三十数人に対して『知識・理解』の観点などで評価をする。それを毎時間、毎時間していくのは、とても無理でした。正直そこまで手が回らない」
さらに待谷さんは、こう続けた。
「文科省が言いたいことはわかります。それが理想なのはわかるんですけど、とても難しい――いったい何時に帰れるんだろう、と思ってしまいます」
文科省も現場の教員が生徒の評価に労力を割かれて、授業に注力できない現状を認識している。