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「問題解決型写真家」を名乗る西澤丞さん。「写真を通じて日本の現場を応援したい」と、私たちの暮らしを支える科学や工業の現場を写してきた。
福島第一原発の廃炉作業、核融合研究所、製鉄所、石炭火力発電所、首都高速道路の建設現場、セメント工場、ジェット機の整備場、ごみ処理施設……。
「世間によく知られず、誤解されているために、近隣住民の理解が得られなかったり、求人しても人が集まらない。要するに実際の科学や工業の現場と、世間の認識との間にはギャップがある。それを写真の伝える力で解決できるんじゃないかと思い、このような肩書をつけました」
しかし、研究施設や製造現場を写すには大きな制約がある。それを乗り越えなければ撮影さえもおぼつかない。
「製鉄所の撮影には構想から10年かかりました。とにかく、撮影許可をとるのが大変で」
テレビや新聞といったマスコミではないので「まず、お前、誰だよって、いうところから説明しなければならない」。
「企画書を読んでくれれば、かなりの確率でOKが出るんですけれど、相手にしてくれないところも結構あります。一番つらいのは『スルー』されること。撮影をお願いしても、何の音沙汰もないことがよくある」
取材を受けたことがない企業や団体も珍しくないそうで、「前例がないからダメ」となる。
「ただ、昔は『前例がないイコール、ダメ』でしたけれど、最近は、『前例はありませんが、考えさせてください』と言われ、最終的にOKが出ることが増えました。流れが変わってきた感じがしますね」
OKが出る確率を尋ねると、「うーん、6割、半分くらいかなあ」。
筆者もさまざまな研究施設や工場を取材してきたが、なかなか悪くない数字である。
■当事者の目線で撮る
取材前、広報担当者から撮影したいものをリストアップしてほしい、と言われることがある。
「でも、何が撮れるかは実際に現場に行ってみないとわからないんですよ。その企業のホームページ(HP)を見ても現場の写真なんてほとんど載っていないですから。そんなわけで、Googleの衛星写真を駆使します。それを添付した資料を送って、このへんを撮らせてほしい、とお願いする」
しかし、施設の内部はわからない。
「なので、基本的に工程を全部見せてください、と頼みます。例えば、発電所だったら、燃料の石炭置き場から発電するところまで見せてください、と」
さらに西澤さんは「現場で作業している人のそばで撮らせてほしい、お願いする」。
工場内には見学や視察用のルートを設けられている場合が結構ある。
「でも、見学者通路から撮ると『傍観者の視点』になってしまう。現場の人が働いているところで一緒になって撮ると当事者の目線になる。写真を見た人が、あたかも現場にいるように見えます」