現場で撮影を許される時間は会社によってさまざまだ。
「フリーでいいですよ」と柔軟に対応してくれるところもあれば「厳密に分単位でスケジュールが決まっている場合もある」。
屋外の撮影で、もう少し待てば雲から太陽が出ていい写真が撮れるとわかっていても、「はい、移動です」と声がかかる。
「撮影には広報の人のほか、各現場の担当者がつきます。その場所が安全かどうかは現場担当者でないと判断できない。なので、その人の都合でどうしてもそういうスケジュールになってしまうんです」
■福島第一原発はNGばかり
製鉄所の場合、1カ所の現場で許される撮影時間は約2時間。意外と長いと思うのだが、西澤さんの感覚では「めっちゃ短いです」。
「例えば、1日に数回しかやらない工程を2時間で撮る。でも、現場なんて絶対にスケジュールどおりには動いていませんから。さらに製造装置と対比する人を入れて撮りたい。そうすると、工程のタイミングと、数少ない作業員さんがやってくるチャンスにめぐり合わなければならない。だから胃が痛くなる」
さらに、現場を案内されたからといって、何でも撮れるわけではないという。
「福島第一原発の中なんて、撮ってはいけないもののオンパレードですよ」
核物質を扱う施設のため、侵入者を防ぐ対策がいたるところに設けられている。
「それを撮ってはいけないわけです。でも、普通にカメラを構えればまず写ってしまう。じゃあ、こっちは、とカメラを振ると、そこもダメ。もう、どこにカメラを向けたらいいんだ、という感じでしたね」
ロケットを撮影した際は、打ち上げ施設での制限はそれほどでもなかった。しかし、「製造現場は厳しかったですね。特に『治具』関係の撮影は一切ダメでした」。
治具というのは、製造過程で使う道具である。何の変哲もない道具に見えても、そこには外部には出せないノウハウが詰まっている。
取材後、撮影した写真は先方にチェックしてもらう。
「NGが出た写真はどんなにいい写真でも完全に削除します。もし、何らかの原因で流出してしまったら、大変ですから」