留学試験を受けられるのは、両親が祝福家庭で、その2世だけだという。
「日本にいても両親にはかまってもらえず、教会のことばかり。なら韓国に留学すれば友達と一緒に過ごせると思った。そのほうがまだ楽しいと」
Aさんが小学5年から6年に進級するときに、旧統一教会の施設で選抜試験があった。試験科目は、国語、算数、作文。
「小学5年までの勉強しかしていないのに、6年の問題が出て、あまりできなかった」
というAさん。60人ほどが受験して、合格者は半分以下という狭き門をくぐり、“エリート”へのきっかけをつかんだ。小学校を卒業すると、韓国・ソウルに渡った。
最初の1年間は、韓国語の勉強に費やした。そして、日本だと中学2年にあたる年に、1年として仙和中に入学した。
仙和中は、韓国の伝統的な芸能、音楽、美術が学べる私立中学として、比較的レベルも人気も高かったという。
「仙和と善正は地元韓国の生徒と一緒に勉強します。学校の時間以外は、学校に併設された寄宿舎に缶詰めにされて、旧統一教会の教義や原理講論を徹底的に教え込まれます。要は“エリート”養成所です」(Aさん)
寄宿舎は「世界兄弟学生苑」と呼ばれ、仙和と善正の両校に留学した日本人の「祝福2世」が共同生活をしていたという。
Aさんによると、当時の生活はこんな感じだ。
朝と夜に祈祷(きとう)会があり、神様(文鮮明氏)に祈りを捧げる時間が30~40分間ほど。先生からも旧統一教会の説教がある。学校では生徒手帳と一緒に文鮮明氏と韓鶴子氏の写真を携帯し、机には2人の肖像写真を置く。朝、昼、晩3食の前に祈祷し、日曜日は礼拝。そして寄宿舎の日本人留学生を対象に、原理講論大会や運動会も開かれる。
「毎週水曜、授業が終わると2時間ほど原理講論の時間があります。年に1度、原理講論大会があるので、分厚い難解な本とにらめっこ。原理講論のどこかを覚えてスピーチするのですが、退屈だし面白くない。学校でテストがあっても、旧統一教会の教義を優先するので、原理講論の時間は必ずあります。勉強より旧統一教会を最優先で、ますます洗脳されていく感じですね」(同)