勉強がしたいと不満を漏らす生徒たちがいれば、

「みことばを読んで、神(文鮮明氏と韓鶴子氏)のために勉強しなさい」

 などと、指導教諭からいつも説教される。

 当時、Aさんらに説教をしていた一人が、旧統一教会の元会長、梶栗玄太郎氏(故人)の息子だったという。

 世界兄弟学生苑の卒業文集には、旧統一教会の元会長の息子がこんな一文を寄せている。

「神様と真の父母様(文鮮明氏と韓鶴子氏)や幹部をしたいながら歩めた」

 と会長経験者の子どもらが仙和と善正に通っていたという。

「私はただの祝福2世でしたが、だれが会長の息子なのかはわかりました。ある息子は、親の七光りというか、親の立場をひけらかしてボスのようにふるまうので、『ボス猿』と呼ばれていました」

 そう話すAさん。中学卒業後の進路について考える時期がくると、一時は日本での高校進学を考えたという。

「ただ、当時は旧統一教会にどっぷりでほかの世界を知らず、もし韓国の留学生活をやめたらサタン(悪魔)が入ってくると思っていました。また両親が変わらず旧統一教会のことばかり。貧乏な生活になることはわかっていました」

 そう考え、日本での進学は断念し、そのまま韓国で善正高に進んだ。

 高校生活も、旧統一教会の教え通り厳しいものだった。

 男女交際は絶対禁止。「『男性と付き合うことは悪』と徹底的に教え込まれますから」(Aさん)。一緒に授業を受ける韓国人から「付き合ってほしい」と声をかけられても当然断った。

 女性の場合、化粧のほか、キャミソール、ノースリーブなど襟元のあいた服、ひざ上のスカート、体のラインが出る服も禁止だった。

「襟元があいていると、そこからサタンが入るから」

 と叱られたという。日本に一時帰国し、かわいい服を買ってきても、たいてい没収された。

 寄宿舎には漫画部屋があり、一定の時間は読むことができた。

 しかし、種類は限られていた。

「恋愛もの、性行為などの描写があるものはまったくなし。アニメ化されるなどの人気漫画だと、『ONE PIECE(ワンピース)』『ママレード・ボーイ』くらいが限界だったように記憶しています」(Aさん)

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