その言葉通り、日本でもおなじみのコンビニでも、「カナビスウォーター」と名付けられた大麻ジュースが冷やされて売られていた。
バンコクの郊外では、自宅のコンドミニアムのワンフロアを「大麻農場」にして、商用目的で栽培する人もいる。
タイ人のムイさんは、もともと食肉関連の仕事をしていたが、大麻解禁を聞き、本格的に栽培に乗り出した。
「いろいろ調べました。24時間照明をあてて、風通しをよくすれば大麻が早く育ちます。最初はタイにある品種を育てていたけど、今はオランダのものを栽培しています。そのほうが高く売れるから」
ムイさんは、大麻専門店も経営しており、店内には、乾燥大麻が入ったおしゃれな瓶が並んでいた。
また、ムイさんが大麻を卸しているレストランには、大麻入り卵焼き、大麻入り野菜炒めなど10種類近い大麻入りのメニューがある。大麻の葉1枚が丸ごと入った大麻ゼリージュースが人気という。ムイさんがこう話す。
「お客さんはタイ人もいれば、外国人もいます。売り上げは順調に伸びている。農家でもお米などにかわって、大麻の栽培に乗り出す人も少なくない。近い将来、医療用の大麻がたくさん必要になるからです。そういう選択肢が増えるのはいいことだと思う」
大麻治療を受けられる専門病院の開設も相次ぎ、大きなブームになっているという。
一方で、健康被害も出ているようだ。
タイの報道では、解禁後間もなく、大麻の過剰摂取が原因と思われる症状で100人以上が治療を受けたと伝えている。さらに、若者への影響を心配する批判的な声が大きいことなどもあり、政府は、20歳未満が大麻を所持したり、使用したりすることを禁止した。
前出のトシさんは自身の経験をもとにこう話す。
「大麻入りといっても、その分量が商品によって違う。私は、大麻が多めに入ったクッキーを食べたときは動悸(どうき)が激しくなり、天井がまわり、とても苦しかった。以来、大麻ジュースを飲むくらいにしている。短期間の滞在の観光客が、興味本位で大麻の分量が多いものを口にしないほうがいい」