俺にとっては大きな壁であり、目標だったからね。現役時代はスタンとバチバチにやり合ったけど、二人とも引退して、先日も俺が入院先からリモートでトークバトルをやったけど楽しかったね。スタンも冗談を言いながらニコニコとトークしてくれてさ。

 俺の引退試合の相手、オカダカズチカもこの本にメッセージを寄せてくれている。「天龍さんが誇りに思ってきたプロレスをしっかり引継ぎ、さらに進化させて、天龍さんが妬いてしまうようなプロレスをしますんで」という言葉があったが、潔いじゃないか! アッパレだ!

 でも、オカダよ、最近少し停滞しているんじゃないか? 新日本プロレスと全日本プロレスのエースは常に最前線でプロレス界を引っ張る活躍をしてもらわないと困るよ。年齢的にもまだまだできるだろう。ちょっと一休みしているのか? 俺を嫉妬させてやるという気持ちを常に発揮してくれよ!

 それからオカダは「昭和のプロレスもすごかったけど、今のプロレスだって負けていないんだよ、ということを伝えたかった」とも言っていたね。昭和、平成、令和といろいろあるが、俺が思うのは肉体的なレスラーのすごさが、今のレスラーには足りていないと思うんだよな。

きれいなプロレスをする華奢なレスラーが増えているように思えて、それも「時代が求めているんだからいいだろう」と言われればそれまでだが……。俺としてはほかのスポーツをやっている人がプロレスを見て「俺でもできるんじゃないか」と一瞬でも思わせることがあってはならないと思っている。

 俺がプロレスに転向してすぐ、1970年代前半にアメリカ修業時代にインディアナポリスで、イワン・プトスキーというレスラーを見たときは、岩みたいなからだつきに驚いたもんだよ。元力士の俺が「すごいからだをしている!」と思うくらいだからね。当時はそんなからだのレスラーがたくさんいて、そういう人たちが全力でぶつかり合う姿を見て、お客さんが熱狂していたよね。華やかな技でどうのこうのより、肉体のせめぎあいが従来のプロレスだと思うから、今のプロレスもそこから逸脱してほしくない。

暮らしとモノ班 for promotion
2024年この本が読みたい!「本屋大賞」「芥川賞」「直木賞」
次のページ
現役を65歳まで続けてきて、まだわからないことがあるぞ