小川:読者の興味が継続するようにという思いは、どんな文章を書いていても必ず考えていることです。サスペンスとかスリラーの方法論みたいなものを使う「シーン」もある。あるいは単純に登場人物の考えていることや謎の行動とかで、読者の興味を引っ張ることもある。さらに、可能であれば、個々の描写だったり文章だったりの面白さで引っ張りたいという思いもある。いろんな形はありますが、僕の場合は、作品全体でというよりは、今、目にしている光景の中で読者に興味を持ってもらえるのはどういうことかな?と、その場その場で僕の持っている手持ちのカードから出していくみたいな感じでしょうか。

杉江:小川さんのことをSF作家だと考えている方もいると思います。執筆される中でそうしたジャンルの存在はどの程度意識に上るものでしょうか。

小川:僕は杉江さんと千街さんに言われるまで、『君のクイズ』をミステリー小説だとは思っていなかった。でも言われて「確かに、不可能犯罪じゃないか」と。書いた原稿をどう売るかは編集者や出版社の問題で、僕はもう全部お任せしています。ミステリーという言葉を使うことで、本が売れて多くの人が手に取ってくれるんだったらそれでいい。書いた時はミステリーを書いているぞっていう感覚はなく、「どうやったら読者の興味を継続させられるか」の一環として、大きい謎を設置しただけなんですね。

 僕は基本的には、普通に面白い小説を書きたい。謎ってね、小説っていうもの自体が持っているんです。その先にあるものを知るために読んでいるから、小説には謎がある。謎がどれだけ読者にとって魅力的かどうかは、作家の技量だと思います。

杉江:『君のクイズ』を書かれて、今のところの反響や受け止められ方はどうですか?

小川:『君のクイズ』に関しては、ビビるぐらいの反響があります。普段だったら、僕の本を絶対に手に取らない人も読んでくれているし。友達も僕の本を読まない人が多いんですけど、『君のクイズ』を読んでよかったっていう声をもらっています。あと、僕の母親は、読みやすかったとか言って僕の作品の中で一番評価が高そうな感じがしています。

杉江:きっと「(クイズプレゼンバラエティー)Qさま!!」などから、小川さんに出演のオファーが来ますよ(笑い)。学生服着ろって。

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伊坂幸太郎さんとの不思議な縁とは?