村上靖彦さん(写真:本人提供)
村上靖彦さん(写真:本人提供)

丸山:ヤングケアラーの支援には、何があっても子どもたちサイドに立ってくれる大人の存在が大切ですね。そういった存在がいる環境をあらかじめつくっておく。そしてまず私たちが、ヤングケアラー自身が支援を必要としている存在だと認識することが必要ですね。私自身は今後も、「見えない存在」を世間に知ってもらえるよう、新しい作品にチャレンジしたいと思います。

村上:親だけでもない、子どもだけでもない、地域のみんなで子どもを育てる。送迎、ご飯、いろんな仕方でサポートし合えば、ケアは家族だけで担う必要はないと思います。周りの人へと開かれている方が安心でしょう。みんなが声を掛け合って、年齢や障害の有無など関係ない、誰でも参加できる居場所、コミュニティーをつくることで、みんなが幸せになれる。子どもも安心して育つことができるのではないでしょうか。方向性はすごくシンプルです。僕は悲観していません。

<それでもきっと――子供たちは大丈夫。問題なのは、自分たち大人の方なのだ――。>(『キッズ・アー・オールライト』より)

(取材・構成/眞崎裕史)


■丸山正樹(まるやま・まさき)

1961年東京都生まれ。小説家。早稲田大学卒業後、シナリオライターとして活動。2011年松本清張賞に応募した、「ろう者」を主題としたミステリ『デフ・ヴォイス』で作家デビュー。以後、社会的に「見えない存在」に焦点を当て、創作を続ける。

■村上靖彦(むらかみ・やすひこ)
1970年東京都生まれ。大阪大学人間科学研究科教授・感染症総合教育研究拠点(CiDER)兼任教員。2000年、パリ第7大学で博士号取得(基礎精神病理学・精神分析学)。13年、第10回日本学術振興会賞。専門は現象学。