■電気通信大学/10年先を見据えた必修科目「量子×AI」

 情報理工学を専門的に学ぶ電気通信大学(東京都)は、「実践型UECデータサイエンティスト養成プログラム」を2021年から実施している。同プログラムの特徴は、AIを作る人材と使いこなす人材の育成を目指すこと。さらに実社会で活用できるスキルを身につけるため、ビッグデータを活用したデータサイエンス(以下DS)教育を実践している。DS教育を統括する西野哲朗教授はこう話す。

電気通信大のデータサイエンス演習の授業風景(大学提供)
電気通信大のデータサイエンス演習の授業風景(大学提供)

「文科省『数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度』にはリテラシー、応用基礎、エキスパートの3段階があり、本学は今年度から募集が始まった応用基礎レベルに申請しています。また本学は17年に、データサイエンス教育を大学院レベルで行う文科省『データ関連人材育成プログラム』に採択されており、このとき博士課程に設置されたプログラムを、エキスパートレベルに相当する内容に整える予定です」

■トップ100人の人材育成を担う

 さらなる特徴が、20年度からDSに量子コンピューターを組み合わせた授業、「総合コミュニケーション科学(通称『量子×AI』)」が、1年次の必修科目となったこと。全15回の授業で、量子分野、AI分野、DS関連を学ぶ。

「大量のデータを使った機械学習であるディープラーニングのネックは、計算時間が膨大にかかること。計算能力の高い量子コンピューターで高速化が期待されます」

 量子コンピューターはまだ開発途上で、ブレークスルーは2030年ごろといわれる。 「実用化を見据えた教育は、将来の人材育成のために欠かせません。政府は先述のエキスパートレベルの人材について、年間2千人、さらにトップクラス100人の育成を計画しています。本学はそのトップ100人のうちの30~40人の輩出を目指して、DS教育に取り組んでいます」

取材・文=上野裕子

※アエラムック「就職力で選ぶ大学2023」から抜粋