九州工業大の坂本教授のゼミ風景。ゼミでは英語でのプレゼンも積極的に取り入れており、国際会議で優秀プレゼンテーション賞を受賞した学生もいる(撮影・江藤大作)
九州工業大の坂本教授のゼミ風景。ゼミでは英語でのプレゼンも積極的に取り入れており、国際会議で優秀プレゼンテーション賞を受賞した学生もいる(撮影・江藤大作)
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 最近よく聞くようになった「データサイエンス」(以下DS)。多くの大学でDS学部や学科、専攻などが立ち上げられ、文部科学省も2021年から「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」を始めた。国はDSを「デジタル時代の『読み・書き・そろばん』」と位置づけ、すべての大学生に学んでほしいという方針を示しているが、DS教育で先を行く大学ではどのような取り組みをしているのか。発売中のアエラムック「就職力で選ぶ大学2023」から抜粋してお届けする。

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■九州工業大学情報工学部/ビットの世界を扱う技を体得する

 ICT(情報通信技術)の進化に伴い、膨大なデータを分析するデータサイエンス人材の不足が深刻化している。国を挙げてDS人材の育成に取り組む中で、2021年度に文部科学省「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」が始まった。

 同制度の認定校である九州工業大学(福岡県)情報工学部の坂本比呂志教授は、その取り組みについてこう説明する。

「本学では、全学生が卒業までに同プログラムのリテラシーレベルを習得します。現在は、同制度の応用基礎レベルの申請を準備中で、大学院ではエキスパートレベルのカリキュラムを策定中です」

■DSの原理を理解し利活用をデザイン

 1986年に創設された情報工学部は、日本初の情報工学部として、ITの進化・発展を担う人材を育成してきた。

「2018年度の改組により、知能情報、情報・通信、知的システム、物理情報、生命化学情報の5学科に。1年次は情報工学の共通科目を学び、2年次から学科ごとに学びを深めます。ビッグデータやAI(人工知能)、情報セキュリティーなどDS全般を学ぶのが知能情報工学科です」

 DSを活用した身近な例としては、インターネット通販サイトのおすすめ機能や自動翻訳機能、車の自動運転技術などがある。

「日々生み出されるビッグデータを統計学やAI、機械学習などを活用して分析し、問題解決に導くのがDSです。本学科では、データを処理する<学習アルゴリズム>の原理を理解したうえで、プログラムを組むことを目標にしています。それができれば、データの分析手法を判断し、DSの利活用をデザインできるようになります。こうした力は、AIでは代替できません」

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世界で活躍するエンジニアを育成