解析の結果、アルコールとインターネットどちらにも依存していない健康な人と比較して、インターネット依存傾向の高い人たちは前頭前野の実行機能が低く、衝動性は高いことが報告されています。さらに驚くべきことに、インターネット依存傾向の高い人たちとアルコール依存症の患者さんの間では、成績に差が見られませんでした。
実行機能は自分で自分をコントロールする能力を支えています。彼らの研究結果から、インターネットへ依存してしまっている人たちは、アルコール依存症の患者さんと同じ程度に、衝動的で自分をコントロールする能力が低いことがわかりました。
■スマホ横目に3時間勉強しても成果は30分
私たち東北大学加齢医学研究所では、子どもたちを対象に脳の発達に対する影響を15年以上にわたって研究してきました。子どもを対象にする理由はいくつかありますが、その一つに、子どもの脳は急激な発達の過程にあるためスマホの影響が表れやすいという点があります。
東北大学加齢医学研究所は、2010年度より毎年、仙台市教育委員会と共同で全仙台市立小中学生約7万人を対象とした大規模調査(「学習意欲」の科学的研究に関するプロジェクト)を実施しています。本プロジェクトでは、標準学力検査で収集した学力の指標と、同時に実施したアンケート調査で収集した学習・生活習慣に関するデータを用いて、子どもたちの学習意欲や学力と関連する学習・生活習慣を科学的に明らかにすることを目指しています。
詳しい分析結果は、『スマホはどこまで壊すか』にまとめましたが、スマホの使用時間が長くなるほど、どんどんと学力が低くなっていくことが明らかになっています。また、スマホをいじりながら3時間以上勉強をしたとしても、実質30分勉強した程度の学習効果しか得られないといった、驚くべき結果の数々も出ています。スマホが子どもたちの学力を「破壊」している、そんな恐ろしい現状が浮き彫りになってきたのです。
ここでご紹介した研究は、子どもたちや10代後半~20代の若者を対象にしたものですが、脳の前頭前野の発達は20歳ごろでピークを迎えるため、30代以降の脳でも同等の影響があるものと危機感をもつ必要があります。