東北大学加齢医学研究所の調査では、スマホで調べ物をしているときは、何もしていないときの脳活動とほとんど変わらないこともわかっている。スマホで調べたことはすぐに忘れてしまうと実感する人も多いのでは。榊先生は「脳がはたらいていないのですから、覚えていなくて当然なのです」という/写真=iStock
東北大学加齢医学研究所の調査では、スマホで調べ物をしているときは、何もしていないときの脳活動とほとんど変わらないこともわかっている。スマホで調べたことはすぐに忘れてしまうと実感する人も多いのでは。榊先生は「脳がはたらいていないのですから、覚えていなくて当然なのです」という/写真=iStock
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 まとまった休みができると、スマホやタブレットを手にSNS、オンラインゲーム、ドラマや映画の視聴などをしているうちに何時間も経っていたという経験は、誰にでもあるはず。近年、急速に普及したインターネットを使用したこれらの習慣は、私たちの脳に悪影響を与えると指摘され始めている。「脳トレ」でおなじみの川島隆太先生率いる東北大学加齢医学研究所は、長期にわたる調査結果からその悪影響について警鐘を鳴らしてきた。同研究所助教の榊浩平先生に、海外での研究もまじえてその深刻な影響について聞いた。(2023年2月13日刊行予定『スマホはどこまで脳を壊すか』から一部抜粋・再編集)

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■「インターネット依存」とアルコール依存の類似性

 まずは、海外で行なわれた調査の結果をいくつかご紹介させていただきます。

 米国では、平均年齢約21歳の大学生1839人を対象に、代表的なSNSの一つであるFacebookの使用と学業成績の関係が調べられました。調査の対象となった学生さんは平均して1日あたり106分、Facebookを使っていました。解析の結果、Facebookをたくさん使用していた学生さんたちほど、学業の成績が低かったことを報告しています。特に、近況のアップデートを投稿したり、メッセージのやり取りをしたりする頻度が高いほど、学業成績への悪影響が見られたようです。

 中国では、平均年齢約28歳のインターネット依存傾向の高い22人の成人を対象に、認知機能の検査が実施されました。この研究の面白いところは、インターネット依存の方と、アルコール依存症の患者さんを比べて論じている点です。

 アルコールの過剰な摂取は、古くから心身の健康に悪影響を与えることがわかっています。一方で、インターネットは普及してから年月がまだ浅いため、過度に長時間使うことがどの程度危険なことなのか、詳しいことはわかっていません。そこで彼らは、既に危険性が明らかとなっているアルコール依存症と、インターネット依存を比較することで、インターネット使用の危険性を明らかにしようと試みたのです。

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