阿波踊りで知られる徳島県。今春の統一地方選で実施される知事選が、荒れ模様だ。すでに立候補を表明している3人は、いずれも自民党の元国会議員2人と元県議。保守分裂の状態だ。前回の知事選で味方だったものが今回は争い、そこに派閥や家系なども絡み、代理戦争の様相を呈している。候補者選びはまだ一波乱ありそうだ。
これまでに立候補を表明しているのは、自民党の元参院議員の三木亨氏、自民党の元衆院議員の後藤田正純氏、自民県連副幹事長を務めた元県議の岸本泰治氏の3人だ。5期目の現職、飯泉嘉門知事は態度を明らかにしていない。
この状況に、ある自民党幹部がこう話す。
「今回の知事選は、新・阿波戦争と言っても過言じゃない」
徳島の県政界では1970年代半ばから80年代にかけて、地元出身の三木武夫元首相と、田中角栄元首相の側近だった後藤田正晴元副総理の派閥にわかれ、自民党系の候補が激しく対立する保守分裂の選挙が繰り広げられていた。その激しさから「阿波戦争」と呼ばれ、全国的にも話題となった。
今回、立候補を表明した後藤田(正純)氏は、その正晴氏を大叔父にもつ。今月5日に辞職願を出して受理されるまで、国会議員としても8期目の途中まで務めるなど経験は豊富だ。
後藤田氏は記者会見で、
「(衆院議員)22年間で培った経験、人脈すべてを、わたしのルーツである徳島県に捧げたい」
と語り、自民党の推薦は「求めない」とも明言した。
前回、19年の知事選では、自民党は現職の飯泉氏を支援したが、後藤田氏は、自身に近い岸本氏を擁立し、自民党推薦の飯泉氏を徹底的に批判した。
今回の会見でも、
「(飯泉氏の)多選の弊害に、徳島の政治家で唯一、反対してきた。県政改革を訴えてきた」
などと対抗意識をむき出しにした。
21年の衆院選前には、後藤田氏が知事と県議会について、「なれあい県政」と指摘したことに対し、自民党県議団は、
「いわれなき指摘に憤りを覚える」
などと党本部に県議全員の署名入りの「連判状」まで出し、衆院選での後藤田氏の支援を取りやめた。