19年の参院選では、徳島県と高知県が合区になったため、三木氏は、候補者を出せない県の救済策としてできた比例代表の「特定枠」として当選した。そうした背景もあり、昨年、合区対象4県(徳島・高知、鳥取・島根)の自民県連は三木氏に対し、知事選への立候補再考の申し入れをした。しかし、三木氏は応じなかった。

 それだけに、「せっかくの優遇された議席を捨ててしまう人は推せない」という県議らの声も聞こえてくる。

 自民党としては、2人の立候補で、様々なもくろみが外れた状況だ。

 そんななかで、前回に続く岸本氏の立候補表明。前回は後藤田氏の「名代」で飯泉氏に立ち向かっただけに、今回は支援者も複雑な思いだろう。

 県議として自民県連の副幹事長まで務めたが、会見では、

「4年前より徳島は疲弊している。一党一派に属さず、あらゆる利権利害を排除する」

 として、自民県連に推薦は求めない考えだ。

 こうした事態に、自民県連幹部は、

「応援できる候補がいない、独自候補もいない」

 と頭を抱える。

 現職の飯泉氏は、21年の衆院選では後藤田氏の「征伐」を掲げ、徳島1区から出馬をほぼ決めていたが“ドタキャン”した。今回、知事選に立候補すると6期目。多選を指摘されるが、まだ62歳。どのタイミングで進退を明らかにするかはわからないが、もし飯泉氏が出馬しない場合、自民県連として新たな候補者をこれから立てるというのは、時間的にも現実的ではない。

 それだけに、

「もう地元では決めきれない」

「党本部の裁定も」

 との意見も出ているという。

 混迷の徳島県知事選。まだひともめ、ふたもめしてもおかしくない気配だ。

(AERA dot.編集部 今西憲之)

著者プロフィールを見る
今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

今西憲之の記事一覧はこちら