出産を機に、いい意味で人に任せられるようになったと語る坂本さん(撮影/写真映像部・高橋奈緒)
出産を機に、いい意味で人に任せられるようになったと語る坂本さん(撮影/写真映像部・高橋奈緒)

 さらに坂本が作詞・作曲した「こんな日が来るなんて」も収録。自身がパーソナリティーをつとめるラジオ番組に寄せられたメールがもとになったポップチューンだ。

「“人生、何歳になっても思いがけないことが起きる”と思わせてくれるメールだったんですが、自分自身のことにも重なって。子供が生まれると“自分は主役じゃなくて、サポート役”という印象もあるけど、まだまだ長く生きなきゃいけないし(笑)、何が起きるかわからないよねって。自分よりも若い女性が歌うことをイメージして書いた歌詞ですね」

■“子育てって本当に大変だ”と実感する

  現在も新作を制作中だという彼女。以前は「何から何まで自分で確認しないと気が済まないタイプでした」というが、今は人に任せることを意識しているとか。

「原稿や写真のチェックから、CDジャケットのデザイン、MV、ポスターまで、かなり意見を言ってきたほうだと思います。自分の活動なんだから、把握しておくべきだと。でも、最近は“お任せします”というワードが増えてきましたね。投げやりになったわけではなく、周囲の人を信用して、任せるところは任せようと。今は家に帰っても休めないし、使える時間とエネルギーは限られている。作詞や歌を全身全霊でやるためには、そのほかのことを分散する必要があるんですよね」

 もちろん、女性の人生において出産は、きわめて大きな出来事。キャリアが中断されることへの不安、生活の変化、子育てを巡る社会環境など、多くの問題を抱えながら日々を過ごしているのは、彼女自身もまったく同じだ。

お金もかかるし、子育てって本当に大変だなと実感してますね。“少子化を何とかしないと”と言われているけど、問題は本当に多いし、“どうやって子育てしろって言うの?”と思うこともあります。私のような職業の人がすぐに活動を再開するのも、“出産後の復帰は、早いほうがいい”という世間のイメージにつながってしまわないかと思ったり……。良くないこともいっぱい見えてきましたけど、私としてはできるだけ良い面に目を向けたいと思っています。子供の視点を通して見えてきた世の中のいいところを感じて、作品として届けたいですね」

(森 朋之)

さかもと・まあや/1996年にシングル「約束はいらない」でデビュー。みずみずしい歌声に定評があり、日本のみならず世界中のファンから支持をうける。歌手、声優、女優、作詞家、エッセイスト、ラジオパーソナリティーなど、多方面で活躍を続け、2020年にはCDデビュー25周年を迎えた。また、俳優としてミュージカル「ダディ・ロング・レッグズ~足ながおじさんより~」で第38回菊田一夫演劇賞を受賞、作詞家としてKinKi Kidsの41stシングル「光の気配」を手がけるなど、活動の幅は広がり続けている。2023年1月25日には両A面シングルを発売。1月から放送がスタートしたTVアニメ『REVENGER』EDテーマ「un_mute」と、同じく1月から放送がスタートしたWOWOWオリジナルアニメ『火狩りの王』のEDテーマ「まだ遠くにいる」が収録されている。

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