■時を超えて伝えたいメッセージを歌詞に
コンサートや演劇などの表立った活動を抑えていた時期に力を入れていたのは、作詞。KinKi Kids「光の気配」(2019年)など以前から作詞家として活動していたが、昨年も冨田ラボ「DEEPER feat. 早見沙織」、堂島孝平「Latest Train」の作詞を担当している。
「歌ってくださる方の声、表現に合わせて言葉を選ぶのは、自分のための歌詞とはまったく違っていて、とても勉強になります。その人の声だから届く言葉、膨らむ言葉があるし、もっと人に歌詞を書きたいですね」
2023年第1弾シングル「まだ遠くにいる/ un_mute」(1月25日発売)にも、現在の坂本真綾のモードが反映されている。「まだ遠くにいる」(作詞:坂本真綾 作曲:姉田ウ夢ヤ・堀下さゆり)は、彼女自身が声優として出演するTVアニメ『火狩りの王』のエンディングテーマ。
「原作の小説を読み、全体のテーマや共感できる部分を探しながら歌詞を書きました。“これまで人間が犯してきた間違いのツケを次の世代の人たちが払う”という世界が描かれているのですが、それはずっと続いてきたことでもあって。もらった命を燃やしながら、少しでも明るいほうに手を伸ばすことの繰り返しで、何とか持ちこたえてきた歴史なんだろうなと。音楽は何十年先の人に聴いてもらえる可能性があるので、そのときに頑張っている人を少しでも励ましたり、支えられたりする、タイムカプセルのようなメッセージがあってもいいのかなと」
「un_mute」(作詞:岩里祐穂 作曲:SIRA)は、TVアニメ『REVENGER』のエンディングテーマ。“消音を解除する”という意味の曲名は、昨年11月の復帰コンサートのタイトルにもなった。作詞は坂本真綾、今井美樹、花澤香菜などの作品を手がけてきた岩里祐穂。
「私の再始動をイメージして書かれた歌詞ではないと思いますが、いい曲名だなと思ってライブのタイトルにしました。“止まることのない世の中でも、どうか心を閉ざさないで”といったテーマなんですが、自分ではたどりつけない表現だし、人に書いてもらうこともやっぱり必要だなと。歌詞を提供してもらうと、歌えば歌うほど発見があるし、あとから胸に迫るフレーズに気づいたりするんですよ」