山崎丹奈さん(撮影/加藤夏子)
山崎丹奈さん(撮影/加藤夏子)

 実際、山崎さんは過酷な研究環境に直面したことが、将来を考えるきっかけになった。山崎さんによると、当時の東工大では学部生の“ほぼ全員”が大学院に進学していたという。土木・環境工学科(当時)でサンゴ礁の勉強をしていた山崎さんも、最初は大学院で研究を続ける道を選んだ。

 だが、明確な終わりがなく、突き詰められるだけ突き詰められてしまう研究という仕事は、山崎さんにとってハードだった。夜通し大学にいることも日常茶飯事だったという。さらに、女子学生は山崎さん1人だった時期もある。研究室に泊まることは避けたいと思い、徒歩で通える場所に引っ越したほどだった。深夜まで研究室に残る生活を強制されたわけではないが、研究を突き詰めようと思えば、“自己判断”でそうせざるを得なかった。

「女子が1人で周りがすべて男性で研究室に徹夜という状況は、今振り返ると、疑問に思うところはあります。課題に時間がかかったことは私の要領の悪さもあると思いますが、もし男性だったら引っ越さなくて済んだのかもしれないなと思います。社会に出てからは、よく『もったいない』という言われ方をされました。専門分野に進まないなんてもったいない、芸能界に入るなんてもったいない、という意味なんだろうと理解しています。ただ、この挫折があったから、自分が研究に対するストレス耐性が足りないことに気づき、女優という別の道に進むきっかけにもなったので、全てがマイナスだとは思っていません」

 東工大が「女子枠」の創設を発表したのは、昨年11月のこと。25年度までに学校推薦型選抜と総合型選抜(AO入試)で計143人の「女子枠」を創設する。これにより、現在は学士課程(学部)に約13%しかいない女子学生の比率を20%以上に高めるという。女子枠は24年度入試から物質理工など4学院(学部)で先行的に開始する。総募集人数は変更せず、女子を増員した分は、一般選抜枠の人数を縮小することで調整するという。

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大学における“多様性”は性差だけではない