テレグラムとは海外のメッセージアプリだ。一般的なメッセージアプリだと、送信した内容が受信者に残ってしまうことがあるが、テレグラムは、設定次第では受信したメッセージを10秒ほどで消去することができ、送信者が受信者のメッセージを消すことも可能だという。つまり、証拠が残りにくいのだ。
Xさんは昔の仲間から昨年12月、闇バイトに勧誘された。メッセージには、
<日当100いくこともある> <大きく稼ごう、そんなにやばくない>
などと書かれていた。
「振り込め詐欺の『昔の仲間でやっているから確実だ』『本当にもうかっているから一緒に』『UDよりはるかに稼げる』とも言っていた」(Xさん)
ちなみに、UDというのは「受け子」「出し子」を示す隠語だという。
Xさんは「100万円」という額に一瞬迷ったが、「タタキ」「脅す」などの言葉が出ていたので怖くて断ったという。
このように、SNSの「闇バイト」の求人で集められた現場の実行役と、それを動かす指示役がいる。
前出のZさんも、「犯行グループ」に加わらないかと昨年、誘われたという。
「今度捕まれば実刑でかなり長くなるし、今は仕事が見つかりましたから。誘ってきたのは刑務所で一緒だった元ヤクザです。私が刑務所にいた数年前は、出所したらどうやって振り込め詐欺で捕まらずにもうけるか、という話題ばかりでした。刑務所の雑居房の半分くらいが振り込め詐欺で実刑というヤツばかりでしたからね」
Zさんは刑務所の中での話題についてそう振り返り、振り込め詐欺から今回の強盗につながる話としてこう続けた。
「振り込め詐欺で、なぜあちこちに電話ができるのかといえば、名簿があるから。例えば訪問介護を受けている一人暮らしの高齢者だとか、高額納税者や高級な宝石購入者、スポーツジム会員とかね。名簿は裏社会ではよく流通しています。新しいものは何十万円もしますね。刑務所では『振り込め詐欺は面倒。家に押し入れば手っ取り早くカネになる』と怖いことを言っていた受刑者もかなりいました。そういう考えのヤツが振り込め詐欺を応用し、日当をアップして人を集めてやらせているんです」