症状としては、鼻からの出血、がんの進行によって起こる「滲出(しんしゅつ)性中耳炎」や難聴、脳神経のひとつで眼球の動きにかかわる外転神経への影響によって起こる複視(ふくし。ものが二つに見える)、首のリンパ節の腫れなどが見られます。

「鼻から内視鏡を挿入しないと見つかりづらいがんで、進行してから発見される場合が多いです」(杉本医師)

■近年、ウイルスによる発症が増えている【中咽頭がん】

 口を開けた時に見える扁桃などを含む、喉の周辺が中咽頭です。罹患率は男性が女性の5倍あります。従来はアルコールや喫煙が原因の患者が主でしたが、前述のように、近年はHPVによるものが多くなっています。

「中咽頭がんのうち、50~60%はHPV陽性のがんで、その割合は年々、増えています」(渡邉医師)

 HPVの感染源は明らかではありません、オーラルセックスなど性行為の多様化が指摘されています。ただし、HPVの感染自体は誰にでも起こりうるものです。

 頸部リンパ節の腫れで気づくことが多く、このほかの症状として、のみ込むときの違和感、咽頭痛、吐血、口を大きく開けにくい、舌を動かしにくいなどがあります。

「HPV陽性がんは、アルコールや喫煙によって起こるものに比べ、治りやすいことがわかっています。HPV陽性のがんは口蓋扁桃や舌根に発症しやすいという特徴があります。リンパ節転移をしている場合、嚢胞(のうほう)形成などの特徴があり、HPV感染を疑います」(渡邉医師)

口蓋扁桃(こうがいへんとう)や舌根から採取した組織を調べ、扁平上皮がんと判明し、「p16 染色」が陽性であれば、このタイプのがんと確定されます。

■食道がんと合併しやすい【下咽頭がん】

 中咽頭のさらに下、喉頭の後ろ側が下咽頭です。60代から70代に多く発症し、罹患率は男性が女性の10倍です。アルコールと喫煙が引き金で、中でもアルコールの影響が大きいと考えられています。

「同じくアルコールが関与する食道がんと合併しやすく、下咽頭がんの25~35%に食道がんが見つかります」(杉本医師) 

【表の解説】下咽頭のすぐ下には喉頭があります。このため、進行した下咽頭がんであるステージ4では、手術の場合、喉頭全摘となるケースが多いです。声を失いたくない場合は化学放射線療法となるが、がんが残る
場合や再発の可能性があり、その場合、追加の処置として手術をすることになります。その際は喉頭全摘となり、初回手術より難易度が高くなります。
【表の解説】下咽頭のすぐ下には喉頭があります。このため、進行した下咽頭がんであるステージ4では、手術の場合、喉頭全摘となるケースが多いです。声を失いたくない場合は化学放射線療法となるが、がんが残る 場合や再発の可能性があり、その場合、追加の処置として手術をすることになります。その際は喉頭全摘となり、初回手術より難易度が高くなります。
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