最後にAERA dot.編集部に寄せられた読者からの相談にも答えてもらった。
【相談内容】
「出産してから夫へのイライラが止まりません。息子も5歳になり、パパとママが険悪だと可哀想だし仲良くできたらいいのにイライラが勝ってしまいます。(30代 広島市)」
【黒川さんの答え】
相談者さんは「イライラする」と書いてあるだけなので、夫が暴力を振るうなど明らかな問題があるわけではなく、おそらく感性の違いなのだろうと思います。
子育て真っ最中にイライラしてしまう理由の一つは、「今できること派」と「ことのいきさつ派」という男女の特性が、生殖・生存のために大きく振り切るからです。女性は子どもの変化を見逃さないようにものすごく共感型になり、守るものができた男性は狩猟本能が働き共感力が人生で最低レベルに落ちる。子育てに対する温度差も出てくるでしょう。
もう一つの理由は、母親の五感のレンジ(範囲)が子どもに合っているから。ずっと子どもの肌を見ていると、帰宅後の夫が脂ぎって、汚いもののように感じてしまいます。足音も冷蔵庫を閉める音もうるさくて、子育て期はとにかく夫がガサツで汚くて、わかってくれなくて、もうとにかくそこにいるだけで腹が立つという状態。何でもわかってくれる5歳の1人息子に対して、何もわかってくれない中年の夫。それは、夫にとってちょっと不利な状態です。
■子育て期は「夫を同居人と思ってやり過ごす」
離婚して別のパートナーを探すという選択ももちろんあると思いますが、夫婦になれば大体7年ぐらいで同じ状態になるはずなので、「気のいい男友達」と思って少しやり過ごしてみてはどうでしょうか。自分の夫でも子どもの父親でもない同居人が生活費を半分出してくれるってすごく良いなと思っていたら、数年後には情のような気持ちが芽生えているはずです。
私の研究では、人は免疫サイクルの影響により7年周期で精神的にも“脱皮”していきます。結婚7年目、14年目で離婚するカップルも多いし、転職も多い。今、相談者さんが結婚7年目で「この人じゃなかった」と思っているなら、1年間は慌てず騒がず、つかず離れず過ごしてみて。ある日、そこまで嫌じゃなかったって思えたりすると思います。
さらに子どもは8歳になると小脳が発達して因果関係が分かるようになり、言葉で説得できたり、子ども自身が解決策を提案してくれたりするようになります。以降、子どもは生活のパートナーになり、夫婦の時間を持ってお互いを見直す余裕が出てくると思います。その時に「やっぱり要らない」となってしまわないよう、すれ違う理由を知っていてほしいなと思います。